junk
朝、欠伸を噛み殺しながらとぼとぼと学校へ向かっていると、後ろからゴトゴトだとかガタガタだとかゼェゼェだとか、おい遅いのだよもっと速く漕げだとか、何やらいろいろ聞こえてきた。相変わらず朝っぱらから愉快な奴らだなあと思いながら振り返る。
「おはよー」
「おっ……は、よ…!」
ギギッとブレーキを鳴らして自転車と、その後ろにくっ付いてるリアカーを止めた高尾が地面に足を付けてはぁあああ〜〜と深く息を吐く。
「おい、止まるな。高尾」
「緑間君もおはよー」
「………」
リアカーの荷台にふてぶてしく座った緑間君は私の挨拶を受けるとぷいっとそっぽを向いた。おや珍しい。いつもだったら無愛想なりに一言ぐらいは返事してくれるんだけど。なんか不機嫌じゃない?
「そうなんだよー。おかげでいつにも増して真ちゃん人使い荒くて……あだっ」
「うるさいのだよ」
「いやー高尾がうざいのは分かるけどおしるこの缶投げるのは良くないと思うよ緑間君。環境破壊だよ。地球がかわいそうだよ」
「俺もかわいそうだよ!?」
と、道端で学生らしい馬鹿っぽい茶番を繰り広げていたら、周りにいた通行人にクスクス笑われた。お恥ずかしい限りであるが、自転車にリアカーなんぞをくっ付けた意味分からない乗り物に乗ってる奴と一緒にいる時点で手遅れだと思うことにする。
「でもさーなんで緑間君そんなイライラしてんの?もしかして生理にでもなっ……いっだ!」
「俺は、男なのだよ…!!」
「暴力反対だぞこの野郎!」
「ぶっははは!今のは苗字のが悪いだろー」
バコッと頭を殴られて思わず涙目。緑間め、女子に手をあげるとはなんて奴。親の顔が見てみたいものだ。あ、いや、前に緑間ん家に高尾と一緒に押し掛けた時に見た緑間母は美人さんだったな。……ちくしょう!
「てかさー、ちょーっと冗談言ってみただけなのに。何も殴らなくてもいいじゃないのさ」
「フン。自業自得なのだよ」
「…どうせ緑間君、おは朝の順位悪くて機嫌悪いだけでしょ」
「!? な、なぜ分かった…!?」
「図星かい。ほんと分かりにくそうで分かりやすいよね緑間君て」
「何ィ…!?」
「…あのー苗字さん…?」
「はいはいなんでしょうか高尾君」
「なんで会話しながらちゃっかりリアカー乗ろうとしてんの」
「ん?」
身長190越えの大男と(自称)きゃぴきゃぴ女子高生の体重を受けて古ぼっちいリアカーがギシギシと音をたてる。高尾の顔が心なしか青ざめている気がした。
「一回乗ってみたかったんだよねー、このリアカー」
「いやいやいや無理無理無理!真ちゃん一人でも重いのにもう一人増えるとか無理無理無理」
「えー。でももう乗っちゃったし」
「人事を尽くせ高尾お前ならできる」
「そうだぞ高尾お前ならできる」
「お前らこんな時だけ仲良いな!」
◇
「ふんっ、ぐっ…ぎ…!」
「おいさっきよりも格段にスピードが落ちているぞ高尾」
「これ歩いた方が速いんじゃないの。もうちょい頑張ってよ高尾」
「うる、せー!無茶言うな…っ!っつの」
「っていうかなんかリアカーめっちゃギシギシいってんだけど大丈夫なのこれ。なんかヤバイ音してない?」
「それは…っ、苗字の体重のせいっ………いっでえ!」
飽きる≪|≫