なあ、好きだ!


(※黄→黒←桃風味)



「テツ、ナイスパス!」

「…青峰君、髪の毛わしゃわしゃするのやめてください。痛いです」

「あー?んなモン気にすんなよ」

「痛いんだから気にするに決まってます。それと暑いんで離れてください」

「へーへー」






「…きーちゃん、」

「うん、バッチリ見たッス。桃っちカメラは?」

「抜かりないよ」


視線はコート中の水色に向けたまま、彼女は左手でグッドポーズをとってみせる。右手にはビデオカメラが装備済み。録画中の赤いランプが点灯中だ。そしてオレも、首にかけたタオルで汗を拭いつつこのベストショットを逃すまいとスマホの連写機能をフル活用している。


「大ちゃんとの連携が上手くいったあとも普段の冷静な対応を忘れないテツ君のクールさプライスレス!」

「でも本当は嬉しくてつい照れ隠しで青峰っちにいつもより辛辣気味になっちゃう黒子っちのツンデレさプライスレス!」

「…おい黄瀬、桃井」

「オレもう黒子っち好きすぎて生きるのすげえ楽しいッス…」

「テツ君がいるなら地獄さえもオアシスだよね!テツ君天使!」

「おい、」


部活中のちょっとした休憩時間。こうやって桃っちと一緒になって黒子っちを見ているのは本当に楽しい。たまに青峰っちにキモいとか言われるけど、そんなことをチームメイト達に言われるのはもう慣れたっていうか。――とにかく、オレはこんな時間がとても好きだった。


「だあああ黒子っち好き!抱いて!」

「いやむしろテツ君は私が抱く!」

「…黄瀬、グラウンド30周な」

「ってええええ!?赤司っち!なんでオレだけ!?」

「いやなんか腹立ったから。それと部活中はスマホをいじるな。ロッカーに入れてこい」

「ええ…」

「黄瀬」

「…はい………」


にっこりと微笑む赤司っちの後ろに何やらドス黒いオーラが見えた気がして、オレは渋々頷いた。あの人マジで怖ぇー…。本当にタメなのか疑わしいところだ。がっくりと肩を落として体育館を出ていく。後ろで桃っちが苦笑いを浮かべながら頑張って、と手を振っていた。



 ◇



(あぁ―、)


好きだなあ。ふと、唐突に、そんなことを思った。今は、多分25周を超えたあたりとか、そんぐらい。いまいちよく覚えてないけど。一定のリズムでグラウンドの地面を踏み締めていると、頭の中で桃色のロングヘアーがさらりと揺れる。…たまにこういうこと、あるんスよね。

――オレは、桃っちが好き。桃っちの笑顔が好き。大好きな人を思って笑う桃っちが好き。大好きだ。

なんていうんスかね、こういうの。恋ってやつ?よく分かんないや。女の子から惚れられることがたくさんあっても、惚れたことってあんまないから。ただ、オレが好きなのは黒子っちが好きな桃っちだから、オレは彼女の恋を出来る限り応援したいなって思うことはある。もしも二人が両思いになる時が来るとしたら、それはそれですごく寂しいんだけど。…うわ、なんかオレすげー良い奴じゃないッスか。少し息の上がった口から、自嘲なのか何なのかよく分からない笑みがクスッと漏れる。そろそろ、30周目が終わる頃だ。



「きーちゃーん!!」

「あ!桃っちー!」

「もう30周終わる頃だよね。お疲れさま。タオルとドリンク持ってきたよ」

「………えーっと、桃っち…そのドリンクは…」

「? 私が作ったやつだよ?」

「あ、じゃあタオルだけ貰うッス」

「えぇ!?」




――だから、どうかその時が来るまでは、キミを想うオレを許してください。なんてね。






なあ、好きだ!




小春さんとの書き合い黄桃。お題に沿ってないのは全力スルーしてください。黄瀬が若干乙女くさいとことかホモォくさいとことか気になるとこ全部右から左に流しちゃってください。しかし正直書くの楽しかった。黄黒桃風味な黄→桃→黒ぷまい。多分叶わなさそうな恋だと考えるともっとぷまい。誰かくれ。 / back
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