黄瀬家の休日



「休日ッスー!」

今日は休日です。
正しくはお父さんの休日です。

マルチタレントのお父さんは、そう易々と休日をもらえません。
しかし、今日だけは運良くどの収録も、撮影もなかったようで朝から家にいます。

お疲れなんですから昼まで寝ていてもいいでしょうに、「名前のご飯を三食食べれる機会なのに寝てたら勿体ない」という、至ってラブラブ夫婦らしい理由で起きたみたいです。
解せません。

お母さんもまんざらでもないようで、お父さんの身体を心配した僕が馬鹿らしいです。

「燈哉ー、バスケしたくないッスかー」

ソファに座っていたお父さんは中庭を指差しながら聞いてきます。

この家にはバスケットコートがあります。
バスケ好きのお父さんが、家を建てる時に一緒に作ったみたいです。

お父さんは無邪気な子供のような目でこちらを見てきます。

それ、お父さんがバスケやりたいだけじゃないですか。

お母さんをチラリと見てみると、「燈哉もバスケ選手になるのかなー?」と嬉しそうに笑っています。

え、いや、なりたくないですよ。
別に嫌いではないですし、友達とやると……なんというか遺伝的にスポーツが得意ということもあって勝ってはしまいますが、選手にはなりたくないです。

言っておきますが、僕の夢は医者か先生です。
キャーキャー言われているお父さんはかっこいいですが苦手なので、ああはなりたくありません。

僕はもっと堅実に生きたいと思います。

「燈哉、バスケやらないんスか?」
「そのしゃべり方やめてください」

ずっと我慢していましたが、もう限界です。

息子に対してどうなんですか、後輩口調って。

僕は嫌です。
おかしいんです。

お父さんは、お父さんなのに。

「って、言われても……癖なんスよね、これ」
「じゃあいますぐその癖を直してください」
「流石に無理!!」
「じゃないとバスケしません」
「燈哉厳しい!!」

お父さんは仕方ないとため息を吐くと、なぜか何度も咳をしました。

喉の調子でも整えているのでしょうか。
意味不明です。まったく。

「燈哉」

いつになく真剣な顔でお父さんが僕を見据えてきます。

「父さんと、バスケやるか」
「…!!」

砕けたしゃべり方に、一瞬驚きました。

父に対して失礼なことかもしれませんが、「こんな顔もできるんだ」と、そう思ってしまいました。

「どうした、燈哉? やるか?やらないか?」
「い、いえ」

不覚にも、かっこいいと思ってしまった。

ああ、なんだ。
この人、こんなにかっこよかったんだな と。
お母さんが夢中になってしまったのも、なんとなく理解できました。

「バスケ、やりたいです」

お父さんは無邪気に笑って、僕の手を引きます。

こんなお父さんのようになれるなら、バスケも悪くないかもしれません。



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121000キリリク!
15万間近だけど?←

遅れて申し訳ありません!
水海月様リクエストの「家族シリーズ、黄瀬家、燈哉くん目線のお話」でした!

燈哉くん楽しいです!

素敵なリクエストありがとうございました!





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