ギブ アンド テイク



俺の名前は李曼成。又の名を「勘が冴える男」だ。

そんな俺には大切な恋人がいる。

「まんせー、資料持ってきてよ」

俺の恋人の名前は魏の文官。
その実績は申し分なく、上官や部下からの信頼も厚い。

その上、とても整った容姿をしており、愛想もいい。

まさに憧れの的。高嶺の花。

正直、恋人になれたのは奇跡だぜ。

容姿端麗、頭脳明晰。
欠点がないように見える名前。

そんな彼女にも、一つだけ困ることがある。
一つだけでも、とても大きな問題だ。

「早く行けってば。私、手離せないから。」

それは性格だ。

愛想が良い分内面は荒っぽくて雑。
俺の扱いも中々ひどい。

恋人になってから知ったのだが、彼女はかなりの猫被りだったのだ。

そして俺が自分に骨抜きなのを見抜いて、色んなことを頼んでくるようになった。
最初の方は頼りにされてるんだと思ってすごく嬉しかったのだが、今となれば話は別。

絶対いいように使われてるぜ、俺ー!

「たまには自分で行けよ」

今日こそは言いなりにならないようにと軽く言い返す。
すると名前はこちらをチラリとも見ず、書面を見つめたまま唇を動かした。

「誰が毎日毎日ご飯作ってあげてると思ってるの?」
「名前です!」

思わず即答。
淡々とした声音がすごく怖かったぜ……俺…。

俺のご飯は毎日毎日名前が作ってくれている。
もちろん同じところに住んでいるし、朝は同じ部屋で向かえる。

少しでも癇に障ることをして名前の美味しいご飯を食べれなくなるなんてごめんだ。
毎朝気まずい思いもしたくない。
ならば、ここは従うのが正解!

……結局なにも進歩してないぜ、俺……!!

とりあえず、今日の反省会は今晩か明日の朝にでもしないとな。
逆らうのは「凶」。
未来の俺自身にも教えなければ。

「あんたしかいないんだからさ……」

名前の執務室を出ようと身を翻すと、背後からそんな言葉が聞こえた。
弱々しい名前らしからぬその声に、俺は驚いて振り向くことも出来ない。

「私が、こうやって本性見せれんのはまんせーの前だけで、すごい信頼してんだから、自信持ちなよバカまんせー」

早口で捲し立てるように言うその台詞に、俺は振り向いてしまった。

だって、今のはつまり、名前にとって俺が特別ってことだろ?

うわ、名前の耳たぶ赤い。

ジーッとその背中を見つめていると、早く行け!と怒鳴られてしまった。

しかしそこには少なからず照れがあるような気がして、嫌な気分にはならない。
むしろ足が軽くなった。

ああ、やっぱり。
名前、可愛いなー。

そんな姿を度々見せられるから、尻に敷かれんのも悪くないって思っちゃうんだぜ。
名前はきっと、分かってないんだろう。


……………………………………

むらさんに相互記念!
尻に敷かれるがまんざらでもない李典です(笑)

気付けば主がツンデレに…
あるぇ……?

こんなんでよければ受け取ってください!
相互ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!





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