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生まれて一週間、私達双子は、早くもその命の終りを迎えようとしていた。

またしても赤ちゃんの姿から始まった私の人生。この姿は羞恥との戦いだった。
まず自分では何も出来ないから食事はもちろん、排泄もお世話になるわけで、精神年齢も成人しきっている私としては泣きたくなるのを堪えるのに必死。

まぁ、二度目なので、どの期間堪えれば良いか分かるだけマシと言うもの。

そんな事を思った矢先の出来事だった。

キキョウさん――改め今生でのお母さんに、母乳を頂く事になった私はそれを吸った、瞬間、舌に感じるピリリとした刺激。

(――えっ?)

前世で多少訓練したからこそ分かるその刺激。これは、毒だ。

何故母乳からそんなものが…何かを塗っていた様子はなかった。つまり、お母さん自身が毒を盛っている可能性が高い。

飲み終わった直後には、もちろん身体に妙な痺れが生じる。お母さんは平気そうだし、暫くしたら痺れに関しては和らいでくれたから、そこまで強い毒では無かったみたいで安心した。双子のあの子も無事なようで良かった。

そうして次第にその毒入り母乳にも耐性がついて一週間。早くも次の試練が待ち受けていた。

「さて、この一週間、よくキキョウの毒に耐えた。次はこの刺激に耐えられれば、晴れてお前達は我が子だと認められる」

そう言ってシルバさん、いえお父さんが取り出したのは、私の元いた世界で見た事のある代物。スタンガン。

「うあう…」
(えっ、ちょっと本気ですか…?)

スタンガンで死ぬ事は、ない。
前世ではその職業上拷問に関して訓練だって受けていた。

だけど、まだ生後一週間でのこの肉体が、果たして平気でいられるかと聞かれれば、答えはノー。

「うーっ、ぅっ、おぎゃぁ、おぎゃぁ」

本能で命の危機を察したのか、私の片割れは泣き出してしまった。
ああ、私も怖いよ。死んで、また生まれてこれる確証なんて何処にもない。今度こそあの人の記憶がなくなってしまうかもしれないと思うと、怖いし、悲しい。

「ははっ、双子だっつうのに、鳴くのは男か。んじゃ、泣かない子はご褒美に先にやるぞ」

お父さんは泣いてない(内心ではもの凄く泣いてますよ?)私を優先する事にしてしまったらしい。

(い、嫌だ…でも、この子がやられてしまっても嫌…)

近付いて来るその手に持たれた凶器に、逃げ出す事も叶わず、ただもう、覚悟を決めるしかなかった。

バチッ、パチッ

電気の発するその独特の音に何となく、師であった彼の人を頭に思い描く。ああ、先生、貴方の技に比べたらこんなもの、たいしたことないですよね。

バチバチバチィッ

肌に触れて音を発てるそれを聞いた瞬間、私の意識はまたしてもブラックアウトした。




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