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瞳を閉じて、風を、大気を感じる。
鳥の気配、虫の気配を読む。
屋敷の中へそれは広げて更なる地下へと気配を探る。

最早前世で日常になっていたこれは、今生でも活かす事ができた。
微かに捕らえた小さな気配。

(あれは…)


「イロハ!じぃちゃんがよんでる!兄ちゃんたちに見つかる前に行くぜ!」

「う、うん!」

私の感覚に引っ掛かった気配に首を傾げていたら、キルアに意識的に思考を遮断されてしまった。

ぐいぐい引っ張りながら走るキルアに、ほんと、これでまだ4っつになったばかりだと言うのだから呆れてしまう。
チャクラも無しに50kg位なら余裕で持てるのだから、この世界の常識も大概ではない。
かくいう私も今はこの子と変わらない事をやってのけているから恐ろしい。

「じぃちゃん!イロハ連れてきたよ」

「おう、ご苦労じゃ」

"一日一殺"なんて前掛けを付けたおじいちゃんは実はキルアの次に話しやすかったりする。
確かに強いし、恐ろしいけど、その分凶悪さも隠すのが上手で、平常時ならまともだからだ。

「どうしたの?今日のメニューはちゃんと終わったよ?」

暗殺術は一月に一個のペースで今は落ち着いている。今月は確か先週覚えた。

本物の死体を使っての講義は今思い出しても嫌な気持ちが込み上げてくる。

「うむ。今日はそろそろ、お前達にも会わせておかねばならんと思っての」

おじいちゃんの言葉に私は先程感じた気配を思い出した。
それって――口に出しそうになった所で私はそれを止めた。
あの場所は地下室だ。独房とは反対に位置するその部屋へはここ二年程近付くなと念を圧されていた。実際、行って見た事もあったけど、あの頃はまだ身体が未熟過ぎて、近付くだけで恐怖が身体を支配してしまい行けなかったのを覚えている。

恐らくあれが"念"による見えない壁なんだ。

原作知識から察する事が出来た。だけど、私に知識はあってもそれを修得する程独学でやろうとは思えなかった。
下手に学ぶと念は上手くいかない。それは原作でキルアが言っていたから。
時期が来たらきっと教えられるのは分かっていたし、だから私は前世での修行が出来ないか試し始めたのが最近だった。

そうして発覚したのは、チャクラはこの世界でも使えるということ。

試しにやってみた分身の術は見事に成功。
これならスタミナをつければ時空間忍術もいける。よって当面は体力作りに勤しむつもりだったんだけど…

「地下の第4独房室、ここに、二人の後に生まれた子がおる」

おじいちゃんに案内されてたどり着いた地下室。いつものあの壁が無かったことから、あれはおじいちゃんが造っていたのだと分かる。

「子…って、カルトのこと?」

キルアの質問におじいちゃんは「いいや」と首を振る。
その表情は修行の時に見せる真剣な顔をしていて、思わず息を呑む。

確かに私達の下に子供が生まれたのは知っていた。だけど、体験した様に、あの先例を受け死ななかった赤子のみが家族として認められることから、カルトの前にお母さんのお腹にいた赤ちゃんはてっきり失くなっていると思っていた。
だけど、、生きていると言う。

「どうして、かくしたの?」

「!、何故、そう思うんじゃ?」

キルアの反応で理解していると思ってなかったんだろう。私の質問におじいちゃんは驚きを一瞬見せ、それから平静に聞き返してきた。

「赤ちゃん、お母さんのおなかにいたの知ってるよ。でも、おなか小さくなっても会わせてもらえなかった。カルトの時は、すぐに会えたのに」

それに、と言葉遣いに気をつけながら私は続けた。

「地下には行くなって言ってた」

そう告げれば、おじいちゃんは納得したように破顔した。

「イロハはやはり聡明じゃの」

「そうめい?」
「うん?」

キルアは言葉の意味が分からず首を傾げていたので、私も分かっていたけど習って曖昧に頷いておいた。
それにおじいちゃんは笑ったけど、それもすぐに顔を引き締めた。

「良いか、あくまで遊ぶだけじゃぞ」

そう言っておじいちゃんは扉を開けた。





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