男って奴は | ナノ
第5話 








翌朝、ゆうべの事もあり、少し寝坊をしてしまった私とハヤテは…
一緒にキッチンへと向かった。

恐る恐るドアを開けると、すでにみんなは食事をしている。

それを見ながらおずおず入り、2人で深く頭を下げた。


「……わるかったッ!」
「……ごめんなさい、」


顔を上げると、みんなが無言で睨んでいる。

ハヤテは気まずそうに自分のほっぺをポリポリ掻いた。


「いや…その……ゆうべは勝手に飛び出しちまって悪かったよ」
「私も…せっかくお祝いしてくれたのに、飛び出しちゃってごめんなさい」


もう一度、頭を下げた私達の耳に、船長の笑い声が届いた。


「ま、仲直りもできたみてえだし、良かったな、」
「……はい」


なんだか恥ずかしくて、赤い顔をうつむかせる。


「ほら、んなとこに突っ立ってねーでメシにしろッ!」


船長に促され、私たちはもう1度頭を下げてからテーブルについた。




食事をしていると、わたしの胸元をチラと見たシンさんが鼻で笑った。


「ハヤテ…」
「……んだよ、」


食事を頬張るハヤテが、涼しい顔のシンさんを睨む。

シンさんは、もう1度、鼻で笑った。


「どうやら、お前みたいな単細胞でも……餌は忘れないらしいな」
「な…!」


シンさんのその言葉に、ハヤテと視線がバチッと合う。
私もハヤテも、真っ赤になった。


「う、うっせえー…!……別に…いいだろっ!」


焦るハヤテを全く無視して、シンさんの手が私の胸に伸びてきた。


「ちょっ…!!」
「ま…お前にしてはいいセンス、してるじゃないか、」
「……シンさんッ!」


胸元のネックレスをマジマジと触るシンさんに、私は慌てて身を退く。

シンさんは胸を見てニヤッと目を細めた。


「……シンてめっ!気安くルルに触るんじゃねーよ!!」


ハヤテが慌てて、シンさんの肩を背後から掴む。
…と、ソウシ先生が『こらこら』と2人の事を窘めた。


「ハヤテをからかうのは、よさないかシン。ルルちゃんも困ってるだろ?」


口をパクパクさせる私に、ソウシ先生がふふっと笑う。

シンさんは不適に笑ってネックレスから手を離すと、ハヤテの顔を見下ろした。


「ハヤテ…」
「……んだよ、」
「ゆうべも言ったが……この船の連中は、他人の魚にちょっかいを出したがる奴ばかりだからな。……せいぜい、餌づけしとけよ?」


馬鹿にしたようにククッと笑うシンさん。


「うっせぇー!余計なお世話だ!てか、ルルは魚じゃねーしッ!」
「そうか?さっきも魚みたいに、口をパクパクさせてたぜ?」
「な……////シンさんッ…!」


慌てて口を覆うわたし。
それを見てシンさんがククッと笑う。


「ま……気づいたら水槽がカラッポ、なんて事にならないよう注意しとくんだな、」


シンさんは、ぐぬぬといきり立つハヤテを無視して、涼しい顔で食事を始めた。

と…。


「おい、ハヤテ」
「あ?」
「おい、ルル!」
「はいっ?」


不機嫌な声でナギさんに呼ばれ、振り向くと――

いつもの三割増で、顔を顰めたナギさんが、テーブルの中央に大きなケーキをドンッと置いた。

昨夜飛び出したから…食べれなかったケーキだ。


「お前ら2人で、責任もって食えよ!!」


ギロッと睨むナギさんに、ギクリと肩が震える。


「え、と……これを2人で?」

「……ああン?」


ゆっくりと顔を向けるナギさんに、慌てて私は口をつぐむ。


「お前、食えねぇとか、言わねーよなァ?」
「……っ!!……食べます食べます!!食べさせていただきます!」


無言の圧力に屈した私。

しゅんとうなだれた頭の向こうで、船長の笑い声が響いた。


「まあそう…ルルをいじめるな、」
「………」
「それにルルがファジーみてぇになっちまっても困るからな?」


腕を組む船長が私を見てハハッと笑う。

助かった……と、私は胸をなで下ろした。


「つーことで。…今夜はこいつを肴に、誕生日後夜祭ということで、宴だな?」


再び船長の笑い声が、キッチンに響き渡った。


 ――と、ひとしきり笑い終えると。


「その前に……なア、ハヤテ――」


なぜかニヤニヤしながら、船長がハヤテを呼んだ。


「…?なんすか船長?」


ハヤテは食事を頬張りながら顔を上げる。

船長の口元が、にや…っと笑んだ。



「お前……俺の船を汚すなよな?」
「!!?」


にやにや笑って、そう言われ、ハヤテは食事をのどに詰まらせた


「…っぐ、…ゴホッ、ゴホッ…な、何のことっすか?」


慌ててハヤテが水を飲む。
すかさずシンさんが鼻を鳴らした。


「船尾の掃除。……しっかりやっておけよ?」


ニャッと笑うシンさんに。


「ブッッッ――――ッ!!!!!」


ハヤテは盛大に水を吹き出した。

『汚ねえなア』と笑う船長に、ようやく意味が分かった私も、火を噴く顔を俯かせる。

チラリと見やれば、いやらしい笑みを向ける船長と
腕を組んで、私を見下ろすシンさん。

後ろではナギさんが、ぶっちょうヅラで私を睨み、トワ君は赤い顔を俯かせる。



「ハヤテ……」
「な……なんすか?ソウシ先生、」


気まずそうにしている私とハヤテに、首の後ろに手を置いて苦笑いを浮かべるソウシ先生が
とどめのひと言を言い放った


「若いから…止められないのはわかるけど……

場所は考えてあげないとね?」


……と。



「………」
「………」


返す言葉もない私とハヤテは、みんなが笑いを噛み殺す中。

食事も通らず、ただただ、真っ赤な顔をうつむかせた。




そしてその日の昼間。顔を赤くしたハヤテがひとり。

船尾でゴシゴシとモップを動かすのだった。






おわり



HAPPY Birthday






 
   






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