第2話





「あまり釣れませんでしたね」


魚を前に、●●●はハアと息をつく。

夕方までクルー総出で粘ったものの、捕れた魚は‥
小アジが8匹、イカが4杯。
中くらいのサバが2匹と、それだけだ。


「シンも航路を、外れるワケにはいかねえしな」
「はい‥‥」
「それに、こんだけありゃー‥充分だ」


しょぼくれる頭をくしゃっと撫でて、ナギは魚を捌き始める。
野菜が無いので●●●はそれを眺めるだけ。
それでもナギの包丁捌きに、感嘆の息を漏らしていた。







夕飯が始まると、途端にハヤテはフォークを高く振り上げた。


「超うめえー!」


テーブルには干し肉以外に、たくさんの料理が並んでいる。


「まさか、あれだけの魚で、こんなに料理が出来るとは‥さすがナギだね」


ソウシも笑顔で箸を伸ばす。
テーブルには‥‥サバの塩焼き、サバの味噌煮。
イカの焼き物にイカリング。

もちろん小アジは骨まで全部食べれるよう、からっと揚がって並んでいる。


「ナギさん、これ‥」


●●●は小アジを見つめていた。


「お前が釣ったヤツだ、喰ってみろ」


ナギに顎で促され、●●●はソロリと箸を伸ばす。
とたんに顔が綻んだ。


「‥‥っ!カリカリして、すごく美味しい♪」
「だろ?」


小さい身からは想像もできないほど
味があってさっぱりしている。

二人はニコリと微笑み合った。

そこに、今度はリュウガが声を上げる。


「お前ら明日は‥‥もうちーと大物を頼んだぜ?」


リュウガも一杯呑みながら、唐揚げになったアジを摘まむ。


「それを言うなら、船長もなァー!イカ以外を釣ってくれよな♪」

「うるせー!小アジ1匹のてめーが言うな」


ははは‥‥
キッチンは、いつもの笑顔で溢れている。
●●●とナギは顔を見合せ、一緒になってクスクス笑う。

そんな彼女をクルーは見つめて、いつものように騒ぎながらも
それでもどこか不安を隠せず、時々目を伏せ、黙々と食事を進めていた。

そしてそんなクルーに、密かに●●●も気づいていた。





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