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「あまり釣れませんでしたね」
魚を前に、●●●はハアと息をつく。
夕方までクルー総出で粘ったものの、捕れた魚は‥
小アジが8匹、イカが4杯。
中くらいのサバが2匹と、それだけだ。
「シンも航路を、外れるワケにはいかねえしな」
「はい‥‥」
「それに、こんだけありゃー‥充分だ」
しょぼくれる頭をくしゃっと撫でて、ナギは魚を捌き始める。
野菜が無いので●●●はそれを眺めるだけ。
それでもナギの包丁捌きに、感嘆の息を漏らしていた。
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夕飯が始まると、途端にハヤテはフォークを高く振り上げた。
「超うめえー!」
テーブルには干し肉以外に、たくさんの料理が並んでいる。
「まさか、あれだけの魚で、こんなに料理が出来るとは‥さすがナギだね」
ソウシも笑顔で箸を伸ばす。
テーブルには‥‥サバの塩焼き、サバの味噌煮。
イカの焼き物にイカリング。
もちろん小アジは骨まで全部食べれるよう、からっと揚がって並んでいる。
「ナギさん、これ‥」
●●●は小アジを見つめていた。
「お前が釣ったヤツだ、喰ってみろ」
ナギに顎で促され、●●●はソロリと箸を伸ばす。
とたんに顔が綻んだ。
「‥‥っ!カリカリして、すごく美味しい♪」
「だろ?」
小さい身からは想像もできないほど
味があってさっぱりしている。
二人はニコリと微笑み合った。
そこに、今度はリュウガが声を上げる。
「お前ら明日は‥‥もうちーと大物を頼んだぜ?」
リュウガも一杯呑みながら、唐揚げになったアジを摘まむ。
「それを言うなら、船長もなァー!イカ以外を釣ってくれよな♪」
「うるせー!小アジ1匹のてめーが言うな」
ははは‥‥
キッチンは、いつもの笑顔で溢れている。
●●●とナギは顔を見合せ、一緒になってクスクス笑う。
そんな彼女をクルーは見つめて、いつものように騒ぎながらも
それでもどこか不安を隠せず、時々目を伏せ、黙々と食事を進めていた。
そしてそんなクルーに、密かに●●●も気づいていた。
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