第13話
夜。風呂上りの●●●が、ベッドに潜り込んできた。
「今日は楽しめたか?」
掛布をめくって抱き寄せれてやれば、やわらけェ身体はおれの胸に
すっぽり収まる格好になる。
「ええ。すごく♪…って言っても。ホントに今日はビックリしたけど…」
「おー。さすがの俺も驚いた。つか、ハヤテ顔。……今思い出しても傑作だな…」
「ふふ……でも、あんまり笑ったら可哀想よ?」
そう言いながらも、●●●は胸に顔を寄せ、くすくすと笑う。
そのたびに髪から漂うシャンプーの香りが、おれの鼻をくすぐった。
「いい匂いだ」
欲情を掻き立てられ、思わず本音がぽろっと出た。
話しの趣旨から外れた言葉に、●●●が胸から顔を上げる。
その腰を、片手でぐぃと抱き寄せた。
「っ、あ……」
「お前が楽しめたなら、寄った甲斐があったな」
「うん、…ひゃっ、なに……?」
寝巻きの裾を捲り上げると、ビクリと身体が縮こまった。
中に手を侵入させると、少し汗ばんだ手が、おれの腕を引き止める。
「ちょっと、何するつもりっ?」
「ん?」
とぼけた顔で、さらに奥へと侵入すると、風呂上がりで下着をつけてない
まーるい乳房に指が触れた。
昼間は水着のままでヤったが。
……場所が変わればそれはそれで、気分も違う。
口づけようと顔を寄せると「や…!」と●●●は、顔を背けた。
白い首筋が際立って余計に欲情を掻き立てられる。
「なァ……」
「…っ!」
寝巻きの中から腕を抜いて、耳に息を吹きかける。
「おれのお陰で…焼けなかったみてーだな…」
「、……ひっ!」
首筋を、ツー…と指でなぞってやると●●●は肩を、きゅ、とすくめる。
そのまま、文句を言おうとこっちを向いた。
その口に、口付けようとした途端。
「だめ…っ!」
小せえ手が、オレの口をパッと塞いだ。
―― あ?
思う間もなく反対の手が、頬に向かって伸びてくる。
「イデデ…」
「もう!ヤダって言ってるでしょっ!」
向き合う●●●はオレのホッペを、容赦なく指でぎゅーーっと摘む。
「エッチなら昼間、したばっかりっ!…それもあんな恥ずかしいところで///」
「……恥ずかしいって…お前も相当感じて……」
「それ以上、言わないでっ///」
摘まむ強さがいっそう強まり。●●●は指をぐりぐり動かす。
「イデデ…っ、分かった。分かったから…手ェ離せ!」
「じゃあ、もうしない?」
カワイイ顔が覗きこむ。
つか、こんな強ェ女に、いつの間にコイツ、なったんだ?
「ああ、もう、しねえ!…しねえから、な?」
「……ほんとにぃ〜〜?」
「ああホントだ。しねっったら、しねえ」
「ん、だったら……」
ようやく指を離した●●●に、イデデと頬をさすって見せる。
「なら。キスだけならいいだろ?」
くいっとアゴを持ち上げるも、その手をパッと払われた。
「キスもダメっ!」
「なんでだ?」
「だって船長は、キスだけじゃ止まらないでしょ?…だから、ダメ…っ!」
ぴしゃりと言われ、返す言葉が見つからねェ。
つかコイツ…
おれの事を、ずいぶん分かってきやがった。
キスまで持ち込めりゃー、やめてやる気は、さらさらなかった。
けど●●●はオレの胸を軽く押して、ごろっと身体を反転させた。
「だから今夜は、もう寝るのっ!」
ね!と向けられた背中を眺める。
こうされたら、今夜は諦めるしか、すべはねェ…
無理やりヤって拗ねられたら、後始末が大変だ。
「ああーあ」
仕方なく、腹の前に腕を回して、背中から身体を抱き締めた。
「せっかくその気になってたのによぉ…」
うなじに鼻をぐりぐり押し付け、すぅ…と息を大きく吸う。
「甘えても、だーーめっ!今夜は、寝るのっ!」
「ちぇっ…!」
海賊王が形無しだ。
つか……おれに抱かれて足を開かねー女は、お前くらいだ。
なんて事を言った日にゃー…それこそヘソ曲げて、どんな反撃を食らうか分かったもんじゃねー。
それに。こうして拒むコイツも可愛くて仕方がねェのだから
もはやこれは、病気なんじゃねえだろうか。
それでも最後の足掻きにと膨れた股間をケツに押し付け、脇の下から
するっと手を滑り込ませた。
寝巻きの上から胸に触れるが、コイツ全然、気づいてねェ。
5本の指を、さりげなく動かし、柔けえ胸をやわやわと揉む。
…イイさわりごこちだ。
そうこうするうち、すぅすぅと、可愛い寝息が聞こえてきた。
これ幸い。
寝巻きの中に、スルリと手を滑り込ませ、直に胸を
揉んだり、捏ねたり、軽く乳首を摘んでみたり…
そのうちオレも疲れのせいでか、いつの間にか深い眠りに落ちていった。
*
「…………」
どれくらい眠ったか。
微かな声が聞こえた気がして、まどろむ意識が、ほんの少し浮上した。
「…んー…●●●、か?」
手探りで身体を手繰りよせれば、定期的な息が胸に掛かった。
どうやら寝返りを打ったらしい。
強く抱くと、「ん」と呻く。
コイツじゃねーな。気のせいか……
「……あのぉー……」
そう思ったその瞬間。
女の声が微かに聞こえた。
「ああん?」
これは夢か幻か……
「うるせーなァー」
目を閉じたまま掛布を掴んで、●●●ごと布をすっぽり被る。
こんでゆっくり眠れる。…そう思った、その刹那。
「………船長、さん?」
今度はそう、はっきり聞こえた。
しかし、女がここに居るわけねェ。こりゃ夢だ。間違いねえ。
潜ったまま、徹底的に無視をする。
―― しかし。
「……あのぉー……」
「………」
「……船長さん?…」
声は、何度も何度も呼びかけてくる。
ひたすら無視するオレの額に、青筋がピキピキと数本立った。
けど……それでも声は呼びかけをやめねえ。
「……あのぉー…」
「だああああ!!しつけーぞ、クソッ!」
堪忍袋の緒が切れた。
バッッッと掛布を捲り上げ、勢いよく身体を起こす。
しかしそこは、闇の世界。
月すら隠れて真っ暗闇だ――
「やっぱ夢か…っ!」
誰もいねえじゃねーかよ。
は……っと息を吐き出して、寝癖のついた頭を掻く。
そりゃそうだ、オンナがここに居るわけねえ…
苛立ち露に、くしゃくしゃの掛布を掴んだ視界に
ふと何かが、見えた気がした。
「ああん?」
ぎゅっと1度目を瞑り、再度そこを凝視する。
「だっ!…誰だてめー!」
部屋の隅に、ぼやーっと光る、何かが見える。
それは人影。
闇に佇む、人の影だ――
「夜襲か…・」
とたん身体に緊張が走り、ベッドの脇に手を伸ばす。
愛刀の剣を指でさぐるが、思わずその手が空を切った。
「んぅー…船長ぉ〜〜、なあに?」
そこに、異変に気づいたらしい●●●が、目を擦って起き出した。
「いや、それがだなァ〜」
咄嗟に身体を抱き寄せるも。その目が闇をぼんやり見る。
「んぅ?…あの人…?」
●●●は目を瞬(しばた)かせ、部屋の隅をじっと見る。
「ヒィッ!」と息を呑んだかと思うと、おれの首にしがみついた。
「ななな…!!」
「ああ落ち着け」
「お‥‥っ、落ち着けってッッ、船長あの人、透けてッ!」
「ああ、そのアレだ」
「ていうか。あの人、足が無いッ!…て、まさか。ゆゆゆうれ―― 」
「あ?オイ!!」
…………。
どうやら気をやっちまったらしい。
うな垂れる身体を抱いたまま、ベッドの隅に身を寄せる。
それから俺は、部屋の隅に目を凝らした。
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