七色十色 | ナノ
第6話 






「うう……っ!」

少しだけ奥へと足を進めて、直ぐに後悔。
目の前はまさに、真っ暗闇で。
頼りない炎では1メートル先すら照らしてくれず、どこまで続いているかも分からない。

「どど…どうしよう……」

ガチガチ歯を鳴らしたまま、今来た方を振り返る。
そこにはまだ、薄っすら明かりが見えていて
引き返そうかと、一瞬迷う。



「ダメ!…そんなのダメだよっ!」

けれどレナは、ふるふると首を横に振ると、手に持つ松明を、ぎゅっと握った。

「船長を見捨てるなんてできないよッ!!」

意を決し、きつく唇を噛みしめてから、恐る恐る振り返る。

「……ぎぃ……!」

刹那、炎の前に生首が現れ心臓が飛び出すほどに飛び跳ねた。



「……っきゃあぁぁあ!!おば…っ、おばけええええ!!」

バッと松明を放り投げ、勢いあまって尻餅をつく。
立つことすらままならず、ズルズル這ってあとづさる。
そこに、ぬう、っと手が伸びてきて。

「きぃ…!」
「……おい?」
「きやあああああ!誰か助けてえええええ!!!!」

向きを変え四つん這いで逃げようとするも時既に遅く
そのまま抱き上げられてしまったレナは、なりふり構わず暴れまわる。

「なっ、…ガッ!イテッッッ!…おれだッ、リュウガだッッ!!」
「ひっ!ごめんなさい ごめんなさい、…え?!…リュウガ?!!」
「ああ、おれだ、」

明るいところまで運ばれるとほんとに彼で。
叩いてしまったらしい左のほっぺを、少し赤く染めている。

じわっ…


「うわあああああん、船長ォォォ!!!!」

勢いよくしがみつくと、リュウガは首を傾げた。

「お前、足が痛ェのに…あんなところで何してたんだ?」
「それはッ…ヒクッ!…船長の返事がないから…何かあったと思って……」
「それで探しに来たわけか?」
「ん、……そう…」

ただ、なんの役にもたたなかったけど、と、心の中で付け足す。
鼻を啜ってバツが悪そうに目を泳がせるレナのカラダを、リュウガは地面におろした。
それから向かいにドカリと座る。

「そりゃー悪かったな」
「ん」
「実はコイツを、とってたんだ、」

ほら、と開かれた手のひらには、弾丸ほどのピンクの石が転がっている。

「なあに、これ?」

鼻を啜って、指でつつく。

「これは水晶だ。つっても水晶といやァ、白か紫が定番だが。これは変色してピンク色になったんだな。おれも初めて見た、」

どうやらこれを採ってたせいで返事ができなかったらしい。
さっきの泣き顔が嘘のように、レナはつまんだそれを光に透かした。

「へえ〜〜綺麗♪」
「お前にやる。誕生日プレゼントだ、」
「え……いいの?」
「ああ、そのために採ってきたんだからよ。 そうだな。港についたらネックレスにでもしてやる、」
「うわっ!嬉しいッッ!」

勢い任せに首に飛びつく。
瞬間くるんと体勢が変わった。
リュウガの後ろには、石の天井が見えている。

「……せんちょ?!」
「…ったく。…ホントは船まで待とうと思ったが…」
「へ?」
「こんなカワイイ事、されちゃーな」

見下ろす顔がニヒルに笑う。
ていうか今までになく顔が近い!

「ちょ……なに?!」
「なにって。……てっきり覚悟はできてるもんだと思ってたが?」
「……かく、ご?!」

大きな手がスカートの中に滑り込み、ビクッとした。
太ももをまさぐられ、覚悟の意味を理解する。

「ま……待って!」

咄嗟にレナは、のしかかるリュウガの肩を両手で制した。

「あ?まだおれに、我慢させる気か?」
「が……ガマン、って!そうじゃなくて。……この1ヶ月。何もしてこなかったくせに…」

そう、貰ったのはフレンチキスくらいで
それがどんなに不安だったか。


「それはお前が、15だったからだろ?」
「………へ?!」
「15じゃまだ不安だろうから、無理におれを受け入れさせたくなかったからだ……」

目を細めて見下ろす顔は、慈しむように優しい。
大事に思ってくれてたことが、そこからじわりと伝わってくる。

「うぅ……ガキだから興味がないのかと思ってた……」
「あのなあ、…俺が1ヶ月もだ。 惚れたオンナ目の前にして、よく我慢したと思わねえか?」
「惚れッッ?!!!」

改めてそんな言葉を掛けられて、カッと顔が熱くなる。
気づけば両手は、地面の上。

「けど、今日でお前も、晴れて大人の仲間入りだ。……ってことで…解禁だな?」
「ひ……っ?!!」

いきなり喉元に噛み付かれ、ビクッと身体が跳ね上がった。

「優しく抱いてやるからよ」

次いで舌が這い回る。

「んぅ……ちょっと待って!」
「あ?もう我慢しろ、つっても、できねえぞ」
「ちがっ…そうじゃなくて……みんなが来ちゃう!」
「……まだ、来ねえよ、」

のしかかるリュウガの右手が、シャツの中に滑り込む。
ブラを上にずらしたところで、聞き覚えのある声が、洞窟の外から聞こえて来た。


「おーーい、船長ォォォォォ!」
「レナさァーーんッッッ!」


この声。


「船長、まだ来てねえのか?」
「果たしてあの場所から辿りつけるかどうか…」
「ま……どのみち残るは、あの穴だけだ、」


どんどん近づく足音。


「ちぇっ……アイツらもう、来やがったか!」

挿し込まれた手が引っこ抜かれ、渋々リュウガがカラダを起こす。

「……せんちょ?」
「仕方ねえ……続きは船に戻ってからだ、」

見下ろす顔が、にぃ…と笑う。
そのまま胸ぐらを掴まれたかと思うと
ガブリと唇に噛みつかれた。

「…………っ!」

それはいつも貰う、フレンチキスではなくて


初めて貰う

ディープキス。



     *



「おう…やっと来たか?待ちくたびれたぜ?」
『……船長ォォォー!』

洞窟から出てきたリュウガに、クルーたちが駆け寄る。

その顔は、安堵の笑み。


「よし……全員揃ったところで宴の準備に取りかかるか!」

おおおおおお!!!!
そう言いながらも、後ろから顔を出したレナの周りをクルーたちが取り囲む。
リュウガはそれに笑みをもらして
ツイと空を見上げた。



「ま……どうせ1ヵ月も待ったんだ。あと少しなら待とうじゃねえか、」


それからじっくり時間をかけて、


俺の色に染めてやる



見上げた空は雨もやんで

青空を覗かせる空の下

高らかな笑い声が響くのだった








おわり



 
   






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