09※
場所は変わらず、生徒会室にて。
とにかく大体の状況諸々は把握出来た。
出来たが、ちょっとこれはまずいんじゃないのだろうか。
「っ、あの……会長……っ」
グラスを手にしたまま、俺はそう声を震わせた。
全身がガッチガチに緊張し、なんか変な汗が出てくる。
そんな俺に対し、ネクタイに手を伸ばしてくる芳川会長は「どうした、飲まないのか?」とあくまで何でもないような顔をしてそれの結び目を解いた。
しゅるりと布を擦るような音に全身の神経が反応し、言い表わせないような気恥ずかしさに顔が熱くなる。
「飲みますっ、飲みます。けど……っ」
この体勢はなんなんだ。
横になり、ソファーの座面に足を伸ばす俺の上に覆いかぶさるように膝立ちになる芳川会長は「そうか、溢すなよ」とだけ言い、そのままシャツのボタンに手をかける。そんな無茶な。
確かに身体検査だとか言っていたが、脱がされるなんて聞いていない。
いやでもまあ調べるのに着たままは不便だ。
わかってるけど、理解してるつもりだけど、やっぱり恥ずかしさが勝ってなんだか生きた心地がしない。
自分ですると芳川会長を振り払いたかったが、会長から制された。
もし阿賀松が本当になにか仕掛けているとして、あくまで盗聴器に気付いているのは芳川会長だけと相手に思わせるためらしい。
声の距離、動き、怪しまれないようにするためにはそれらをそうらしくする必要があり、それなら実践した方が早いという結論に至ったようだ。
先ほど見せられた芳川会長のカンペにはそう書かれていた。凄まじい準備の良さだ。
確かに阿賀松が盗聴器を仕掛けたときのことを考えれば最善の方法かもしれないが、もしそうでない場合を考えたら恥ずかしさで死んでしまいそうだ。
視界の隅で芳川会長の指が動き、器用にそれを一つ一つ外していく。
静かな場所と自分の置かれた状況のせいか、芳川会長の動作を意識せずに入られない。
「ふ、……ッ」
「………」
「……ん」
「おい、変な声出すな」
「ぅ、え……っ?!」
どうやら無意識に呻き声が漏れていたようだ。
「ち、違います……っそんなつもりは……ッ!」芳川会長に指摘され、カッと熱くなる顔を押さえながらそう慌てて訂正しようとするが逆に恥ずかしくなってしまい、慌てて俯いた俺は「ご、めんなさい……」と謝罪を口にする。
なんだかもう情けなくて仕方がない。
なにも言わない芳川会長の顔を見るのが恐ろしくて、手で口を塞いだまま大人しくしていると不意に芳川会長の手が離れる。
どうやら、全てのボタンを外し終えたようだ。全開になるシャツになんとも言えないような羞恥心やら情けなさでいっぱいになっていると、そのまま背後に回された芳川会長の手に服を脱がされる。
「、っあの」下に着ていたシャツ一枚だけになりそうになり、ついそう声を漏らした。
「どうした?」
そして、この涼しい顔だ。
なにをそんなに慌ててるんだと不思議そうにしてくる芳川会長に自分のキョドりっぷりが浮き彫りになって逆に恥ずかしくなってきた。
「……なんでもないです」そう慌てて俯けば、「そうか」と小さく頷いた芳川会長は肩を撫でるようにシャツを脱がし、それを適当に畳みテーブルの上に置く。ちょっと肌寒い。
Tシャツの上からパンパンと軽く撫で付けるように体を調べられ、どうやらなにも仕掛けられてないと判断したようだ。芳川会長は俺から手を離す。
「そういえば今日は十勝の手伝いもしてくれたそうだな」
そして、下腹部に手が伸びてきた。徐にベルトを掴まれ、ギクリと体が緊張した。
そして、先程芳川会長が見せてきたカンペのことを思い出す。
あくまでも平静を装え。あのカンペにはそう書かれていた。
つまり、この場違いな世間話に合わせろということだろう。
「手伝いっていうか、着いていっただけですけど……」
「いや、それだけでも十分助かった。一人いるだけでも大分変わってくるしな」
やっぱりこっちも脱がされるのかとベルトを弛める芳川会長の手から視線を外せば、留め具を外した芳川会長は「しかし、悪かったな」と申し訳なさそうな顔をして呟く。
「せっかくの文化祭なのにこっちの手伝いまでさせて」
「いや、気にしないでください。あの、俺も楽しかったですし」
いつもと変わらない他愛ない会話。ただ一つ違うのはやはり状況だろう。
ベルトを引き抜いた芳川会長はそれをテーブルの上に置いた。
カチャリと小さな音がして、心臓が跳ね上がりそうになる。
「だったらいいが、今度また正式に礼をさせて貰うよ」
空いた手を下腹部に潜り込ませ、そのままジッパーを下ろしてくる芳川会長に「そんな、大丈夫です」と俺は小さく首を振る。構わずボタンをはずされ、ジッと小さな音を立て金具を下ろされた。
緩められるズボン。そのままゆっくりと脱がされ、なんだかもう穴があったら入りたくなる。
「別に遠慮しなくていい。俺がしたいと言ってるんだ」
そういう意味ではないとわかっていても、状況が状況なだけにそういう風に聞こえてしまう。
不純した自分が恥ずかしい。
下一枚になり、外気に晒されスースーと風通しがよくなる下半身になんだかもう恥ずかしさでいっぱいになった。
ぐいぐいとシャツの裾を伸ばしなんとか隠そうとしながら、俺は恐る恐る会長に目を向ける。
「でも、会長だって忙しいですし俺ばっかり……」
「君だからだよ」
そして、言いかけたところを芳川会長に遮られた。
「尽くしたい相手に尽くしてなにが悪いんだ?」真っ正面から見据えてくる芳川会長はぐいぐいとシャツの裾を伸ばす俺の手首を掴み、そうなんでもないように続ける。
なんというか、結構会長ってこういうこと普通に言うよな。
タラシ、というのだろうか。
フリとはわかっていたが、そういう言動に慣れていない俺からしてみれば堪ったもんじゃない。
全身が緊張し、どう返事したらいいのかわからず顔に熱が集まる。
「……ぁ……ありがとう、ございます……っ」
会長の顔をまともに直視出来ず、そのまま俯けば頭上から「ああ、こちらこそありがとう」と小さく笑う芳川会長の声が落ちてきた。
そして、そのままシャツの上から手を退かされたと思えば徐に下着のウエストを掴まれる。
「っ、会長」
「なんだ」
「あの……っ手が……」
「ああ、そうだな」
まさかこれも脱ぐのか。
「っ、まっ待ってください」しれっとした顔でウエストと肌の間に指を滑り込ませてくる芳川会長に目を見開き、咄嗟に脱がそうとしてくる会長の手を掴んだ。
そして、無言でテーブルに手を伸ばした芳川会長は一枚の紙を手に取り俺の目の前に突き出す。
『過度の抵抗は相手に悟られる可能性がある』
「……っ」
芳川会長のカンペにはそう書かれている。
会長の言っていることは確かに間違っていない。
一方的に邪な想像を膨らませ、変な意識を持っている自分が悪いのもわかる。
だけど、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「すぐ済ませる。少しの辛抱だ」
どうすればいいのかわからず、芳川会長の腕を掴んだまま俯く俺に対し、芳川会長はそう呟いた。
今度はカンペではなく囁くような小さな声だった。
わざわざ自分のためにしてくれている相手に対し、こんな態度を取るのは失礼じゃないのか。
いつもと変わらない芳川会長の優しい声に、こんなことくらいで恥じらっている自分がみじめになってくる。
「グラス、テーブルに置いとくか」
黙り込む俺に、芳川会長はそう尋ねてくる。
言われて、握り締めていたグラスのことを思い出した。
芳川会長のことで頭がいっぱいになっていたお陰ですっかり忘れていた。
表面に無数の滴を作り、掌を濡らしてくるそれに目を向けた俺はそのまま静かに頷いた。
どうしてこうなったのだろうか。
「……ッ」
芳川会長の手には先ほどまで俺が穿いていた下着が握られていて、着ていたTシャツの裾を掴んだ俺はぐいぐいと裾を伸ばしなんとか露出した下半身を隠そうとするが、なんかもう色々やばい。
恥ずかしい。恥ずかしい。死にたい。
会長に下着を取られ、それだけでも情けなさやら恥ずかしさやら申し訳なさやら嫌悪感やらぐっちゃぐっちゃになって頭の中が真っ白になるが、なんてことだろうか。
露出した下腹部を意識すればするほど下半身に熱が集まり、硬くなり始める自分のものになんかもう泣きたくてしょうがない。
裾を押さえるフリをして膨らみ始めるそこを手で押さえるが、もしかしなくても芳川会長にはとっくにバレているだろう。
座面の上で体操座りをするように足を閉じ、なんとか股に挟めて隠そうとするが逆にもじもじしてしまい内股気味になる自分が恥ずかしくてこんな状況で勃起する自分が情けなくて。
調べるなら早く調べて下着を返してくれ。
そう言いたかったが芳川会長の方を見るのが怖くて、俺は赤くなった顔を俯かせたままただ芳川会長の行動を待つ。
「お礼の件だが」
そして、俺の下着をテーブルの上に置いた芳川会長は「なにがいい?」と尋ねてくる。
「ぅ、っえ……?」
「やはり、ここは本人に決めてもらった方がいいと思ってな」
いきなりの問い掛けに一瞬意味がわからず、顔を上げればすぐ目の前に芳川会長の顔があってビックリした。
俺の異変に気付いているのか、敢えて気付いていないフリをしているのか。
間違えなく後者だろう。
いくら俺が勃起してようが、状況は変わらない。
先ほどまでと変わらぬ調子で尋ねてくる芳川会長に、俺は合わせるように「あの……俺は、会長がよかったらなんでもいいです」と答える。
緊張からか変に声が上擦ってしまい、顔が更に熱くなってきた。
「俺がか?」
恐らくタコかなにかのように赤くなっているであろう俺とは対照的に、相変わらず涼しい顔をした芳川会長は意外そうにきょとんと目を丸くさせる。
そして、すぐにいつもと変わらない小さな笑みを浮かべた。
「それでは君がつまらないだろう」
不意に伸びてきた芳川会長の手に膝頭を掴まれる。
「いえ、あの、でもッ……」なんだか嫌な予感がして、咄嗟に後退しようとするがすでにソファーの端まで来ていた俺の背中には肘掛けが当たり、それ以上は進めない。
逃げ場を失い、追い詰められたようなこの体勢。
ソファーの上に膝立ちになる芳川会長は掴んだ俺の両膝を開いた。
そう、開脚だ。
それはもう見事も糞もないがどっからどう見ても開脚で、必死に隠していた勃ちかけのそれは剥き出しになって寒いとか恥ずかしいとかそういう次元を越え、喉奥からは「ひいっ」と情けなく色気もない声が漏れる。
「っあ、あああの……ッ」
声が震え、全身から血の気が引く。
フレーム越しの芳川会長の目がゆっくりと自分の下半身に向けられ、それはもう恐ろしさしか感じなかった。
そうだ、身体検査だ。芳川会長は俺の体を調べると言った。ならばこれもその検査の一環に違いない。なにを恥ずかしがっているのは俺は。
動揺のあまり逆に冷静になってくる自分自身にそう声を掛けてみるが、普通に考えて可笑しいだろ。
こんなところに仕掛けられてるわけがない。そんなもの見りゃ一目瞭然だ。
それでも、芳川会長は離してくれない。
眉一つ動かさない芳川会長の視線が絡み付いてもうどうしたらいいのかわからない。
隠せばいいのか、抵抗すればいいのか。
芳川会長は俺のために検査してくれてるわけでそこに意図があるはずがなく、寧ろその検査を勝手に意識してあわよくば勃起なんかしてるのは俺だ。
さっき、芳川会長は抵抗をするなと言った。だったら俺がすることは一つしかない。ただじっと大人しくこの拷問のような時間を過ごすだけだ。
芳川会長によって開脚された自分の太股に触れ、そのまま恐る恐る膝の裏に腕を回し足を固定する。
せめて、芳川会長にわざわざ手を患わせないように。
そう思ったが、自分で自分の足を開くのはかなり恥ずかしくて、手の震えが腿から伝わってきた。
熱くなる顔を隠すように俯き、ぎゅっときつく目を瞑る。
もう煮るなり焼くなり好きにしてください。そう覚悟を決めたときだった。
瞼越しに感じていた芳川会長の影が僅かに動く。
そして次の瞬間、肛門に何か触れたと思ったらそれはずぷりと濡れた音を立て体内へ入ってきた。
「ッ、あ……ッ?」
瞬間挿入されるそれに全身が緊張して、何事と俺は閉じていた目を見開き自分の股間に目を向ける。
指だ。芳川会長の指が入り込んできていた。
毛穴という毛穴から嫌な汗が吹き出し、一瞬息が詰まる。
意味がわからない。なんで、指。無意識に顔が引きつり、今度こそ思考回路がショートする。
「ひッぁ、やッかいちょ……ぉ……っやめ……ッ」
唾液でたっぷりと濡らされた芳川会長の指は乾いた内壁を濡らすように滑り、なにかを探るように体内を動いた。
痛みというより、違和感。腹を探るその嫌な感触に背筋がぞくりと震え、全身が粟立つ。
「君は本当に真面目だな」
そんな俺に構わず、根本までゆっくりと指を挿入させてくる芳川会長はいつも通り小さく笑い、「遠慮せず、欲しいものがあったら言ってくれていいんだぞ」と変わらない調子で続けた。
一瞬会長がなんのことを言っているのかわからなかったが、恐らく先ほどの会話の返事なのだろう。
「俺としても、そっちの方が嬉しい」
そう言う会長とは対照的に体内の指は内壁を掻き回してきて、指の腹でやんわりと突くように刺激されればビクリと腰が小さく跳ねた。
あれか、これはまさか体の中になにか仕掛けられてるんじゃないかって疑われているのか。
唾液で濡れた体内を探るような指の動きにぐっと堪える俺は、ふとそんな思考を働かせる。
いやまさかそんなバカな。
いくら芳川会長だってそんなアホらしいこと考えるわけがない。
そう思考を振り払うように首を横に振ったとき、滑るように這うそれは明らかに探っていてなんかもう心臓が早くなって指先で引っ掻かれてうっかり漏れそうになる声をごくりと固唾と一緒に飲み込んだ。
どうやら、俺の予感は的中しているようだ。
「っ、ふ……うぅ」
いくら阿賀松でもケツに盗聴器しかけるわけがない。
それに、今日阿賀松に会ってそんなところ触られた覚えはない。
でも、こうして芳川会長に念入りに調べられているということは少なからず俺が阿賀松にケツ弄られたと思われているわけなのだから結構傷付く。
というかそんな風に見られていたのかと思ってショック受ける反面、事実なのだからなにも言えなくなる。
現実逃避。ああだこうだ頭の中でそれらしい理屈を並べたところで芳川会長にケツ弄られていることは事実だし根本まで突っ込まれて抜き差しされてまるで愛撫するように腹の中掻き回されてるのも事実だしその指の動き感触が心地好いのも事実で、体の芯が熱くなって脳味噌まででろでろに蕩けそうになっているのも全部全部事実だ。
こんなの可笑しい。そう思ってるのに、抵抗出来ない。
『抜いてください』もしその一言をうっかり口にでもしてしまえば、最悪阿賀松の耳にまで届いてしまう可能性がある。もしそうなったら。
前日、予め芳川会長から聞いていた言葉を思い出す。謹慎処分、もしくは退学。それは俺だけではなく、芳川会長もだ。
そうだ、わざわざ芳川会長は自分が処分される可能性があるにも関わらずこうして俺に協力してくれている。
指一本くらいがなんだ、肛門破損されるよりかましじゃないか。
そう必死に自分に言い聞かせる俺は、そのままぎゅっと足を抱き締めた。体の震えが止まらない。恐怖心か嫌悪感かはたまた羞恥心か。
それを見分けることは出来なかったが、確かに歓喜ではないのはわかった。
「齋籐君」
指が動く。ぐりっと強く押され、「んっ」と小さな声が漏れた。
不意に名前を呼ばれる。合わせろ、と言っているのだろうか。
恐ろしくて顔を見ることは出来なかったが、恐らく芳川会長は押し黙り上の空になっている俺を疑問に思ったようだ。
こんな状況下で悟られないようにいつも通り喋るなんてできるわけがない。
そう思って止まないが、ここまで来たんだ。
緊張できゅっと締まる喉奥。それを無視して「俺は」と声を絞り出した。
「ッ……っおれは、会長が喜んでくれるなら、それだけで……っ」
十分です。そう言いかけて、息が詰まった。
抜かれかけた指の関節はくの字に曲がり、性感帯に触れたその瞬間ぶるぶると全身が震える。
目を見開き、ぱくぱくと開閉させた口から最早声は出ず、あまりの快感に俺は思わず絶句した。
「俺はその気持ちだけで充分嬉しいよ」
「ありがとう」そう相変わらずの口調で続ける芳川会長は申し訳なさそう小さく微笑む。
演技か、素なのか。
それを判断することはできなかった。
「それと、すまない」そして、芳川会長はそう小さく唇を動かす。
乱れ始める思考回路では芳川会長の言葉が理解出来ず、恐る恐る芳川会長の顔を見上げようとしたときだった。
「んんっ」
伸びてきた芳川会長の手に口許を鷲掴むように塞がれる。
座面に後頭部を押し付けられ何事かと目を丸くしたとき、性感帯に触れていた指が乱暴に動き、その箇所を強く突かれた。
別の生き物のように腰が跳ね、襲い掛かってくるその強い快感に耐えられず、思わず腿から手を離した俺は咄嗟に覆い被さってくる芳川会長の胸を突っぱねようとする。
が、体勢が体勢だからか。
ただでさえ性感帯をぐりぐり弄くられて爪先から指先、芯から芯まで脱力しかける体で会長を止められるわけがなく、寧ろ前立腺を愛撫する指の動きが激しさを増し視界がチカチカと点灯する。
やばい。なんかやばい。よくわからないけど取り敢えずやばい。
腰が痙攣を起こし、勃ちかけだったそれはいつの間にかガチガチになっていた。
息が上がり、それでも口を塞がれてるせいで新鮮な空気を取り入れることが出来ず息苦しい。しかし、それすら心地がよくて。
「ふッ、んむぅッ」
そして、押し潰すように激しく擦られ、血液が集まりこれでもかってくらい射精の準備をしていた性器は耐えることも出来ないまま先走りで濡らした尿道からは勢いよく吐精した。
びくんと大きく跳ね飛び出したそれはポタポタと自分の服にまでかかってしまう。
頭の奥がじんじんと熱く疼くような射精を目の当たりにしようやく芳川会長は俺の口から手を離した。そして、そのままゆっくりと指を引き抜く。
「っは、ぁ……うぅ……ッ」
熱を吐き出し、次第にクリアになっていく脳内。
なのに顔は熱くなる一方で、自分がされたことを改めて理解した俺は泣きそうになりながら両腕で顔を覆った。
「また改めて欲しいものがあったならなんでも言ってくれ」
そんな俺を見下ろす芳川会長はそうふっと笑い、「なんたって、君へのお礼なんだからな」と目を細める。
腕の隙間から覗いた芳川会長が濡れた指を舐めるのを見て、背筋がぞわりと震えた。
「……っわかり、ました」
はあっはあっと肩を上下させ乱れた呼吸を整える俺はそう絞り出すような声で答える。
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