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※R18ですがエロくないです

「っ、詩織……ッしおり、詩織ぃ……ッ」


毒だと思った。
触れただけで侵食してしまうような、劇薬。


「っ、ん、ぅ……」


こんなの良くないと頭の片隅で理解していても、制御することが出来ないのだ。
汗ばんだ肌が熱で赤くなっていく。そこに指を這わせれば、びくりと彼の体は跳ね上がった。

ゆうき君は、この子は、伊織のものだから。
駄目だ。と、頭の中で繰り返す。けれど、脳裏に浮かんだあいつの顔はすぐにゆうき君の声で掻き消されるのだ。


「し、おり……っ」


抱き寄せた胸元に舌を這わせれば、背後に回されたゆうき君の手が背中を掴む。
ぷっくりと膨らんだ乳輪に唇を寄せれば、擽ったそうにゆうき君は俺の肩口に顔を埋めた。


「っ、だめ、だめだって、詩織……」


震えた声。本気を出せば俺の手なんて振り解けるはずなのに、突き飛ばすことも出来るのに、それをせずに俺の腕の中に収まっているゆうき君に自惚れてしまう。お門違いだと分かっていても、期待してしまう。
その目が今だけは俺を見てくれてる。その事実に余計興奮して、抑えきれなかった。
突起には触れないように、乳輪を唇と舌で撫でるように愛撫すれば次第にゆうき君の声が小さくなっていき、とうとうその声も聞こえなくなってしまう。


「し、おり……」


吐息混じり、潤んだ二つの眼が俺を見下ろす。
薄暗い部屋の照明に照らされ、乳輪が濡れるのが余計扇情的で、息を飲んだ。


「……ゆうき君、ごめんね」


本当は、こんなことするつもりはなかった。なんて、どれだけ言い訳を並べたところで自分のしていることは何も変わらない。
震えるゆうき君の唇を撫で、そっと口付ける。
本当は、ただ慰めたかっただけなのに。
どうして。


「っ、ぅ……ん、……っんん……」


唇を触れ合わせながら胸を弄れば、ゆうき君の唇はきゅっと結ばれる。それが解かれるわけがないと分かっていても、俺はその唇の柔らかさを確かめたくて何度も唇を重ねた。
乳輪への刺激で血液が集中したせいか、既に硬く凝ったそこを指の腹で柔らかく揉み解せばゆうき君の細い肩は震え、微かに開いた唇から細い吐息が漏れた。


「……っ、ゆうき君……」

「ど……して……っ」


俺の手を握り締めたゆうき君は、呟く。下手したら消え入りそうなそのか細い声は、俺の耳にしっかりと届いていた。

『どうして、優しくするんだ』

そう言って、ゆうき君の目尻から涙がこぼれ落ちる。
俺は、言葉を失った。
自分を優しいだなんて思ったことはない。今だってそうだ、俺は、ゆうき君の心の隙間に付け込んだ最低なやつだ。
なのに、ゆうき君はそんな俺を優しいと言うのだ。
それが余計哀れで、愚かで、俺は、ゆうき君を抱きしめた。男子高校生にしては薄いと思っていた体は抱き締めてみると余計小さく感じるのはゆうき君は丸まっているからだろう。
それでも、頼りないその体がこれ以上傷付けられて壊れてしまわないようにと、抱き締めずにはいられなかった。


「そんな風にされたら……俺、どうしたら、いいのか……っ」

「……ごめんね、ゆうき君」

「っ……詩織」

「……」


嫌われてもいい、蔑まれてもいい。いっその事、突き放してくれた方が楽だったかもしれない。
けれど、優しく触れられることに慣れていない彼は俺の背中に手を回した。
これ以上許されたら、何をしてしまうのか自分でも分からない。それでも。


「詩織……ッ」


ゆうき君の方からおずおずと顔を上げ、そっと重ねられる唇に、息を飲む。
撫でるような、輪郭を確かめるようなもどかしいキスだった。
辛うじて保っていた一線をゆうき君から踏み込んできたのだ。
伊織の恋人だとか、関係ない。俺は、この子が泣いてるのをただ指を咥えて見てることは出来ない。
最低だと言われようが、どうでもよかった。
ただ、溢れる涙を止めたくて、冷たくなった体を抱き締めて暖めてあげたくて、肩の震えを誤魔化せることが出来たらそれでよかった。
それが間違いだと分かっていても、向かった茨道で足を取られようとも、底なしの沼だとしても、ゆうき君一人を残すくらいならこれでいい。
今だけはただ、ゆうき君の体温を感じたかった。


end?
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