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縁×齋藤でお漏らし

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

その日は何かと間が悪かった。
トイレに行こうとすれば志摩に捕まり、それを躱してる内に担任から手伝いを頼まれる。
なんとか志摩から逃げられたが、それでも手伝いを終えた時には大分俺の膀胱が限界に近付いていた。
早くトイレに行かなければ。
特別教室棟、ここから一番近いトイレまで結構距離がある。
そこまで、早く、辿り着かなければ。
そう、足を踏み込んだ矢先だった。


「や、齋藤君」

「ひっ!」


背後から聞こえてきた声とともに、徐ろにケツを揉まれ堪らず下腹部に力が入る。
寸でのところで堪えたが、それでも大分やばかった。


「っ、えにし、先輩」

「奇遇だね、こんなところで会うなんて。今から帰るところなの?」

「え、ええ、まぁ、その……」


何つータイミングだろうか。
ニコニコと笑う縁は、一度捕まればなかなか逃げることが出来ないしつこい男だった。 
焦りと動揺で腹の奥がぐるぐると鳴るのが聞こえた。
ああ、早くどっかに行ってくれ。そう念じるが、勿論縁に届くはずもなく。


「そりゃよかった。ね、これからご飯食べ行かない?俺昼飯抜いちゃったからとにかく腹減っててさぁ」

「え、今からですか……?」

「ダメ?」

「ええと、その、ちょっと今急いでて」

「でも用事ないんだろ?ああ、着替えたいとかそういうんなら俺待つからさ、ね?どう?」


汗が滲む。少しでも気を緩めたら漏らしてしまいそうだった。
このままでは本当にやばい。下腹部に力が篭もり、足を動かし気を散らそうとするが余計挙動不審なことになっていたに違いない。
けれど、縁の目を気にしてる場合ではなかった。


「ご、ごめんなさい、俺……用事思い出したんで……っ」


ああ、もうだめだ。だめだ。早く、早くトイレに。
失礼だと分かっていたが、それでも漏らすよりかはましだ。そう思って、縁に頭を下げてそのまま逃げ出したときだった。


「あっ、ちょっと、齋藤君待てって!」


背後から伸びてきた腕が、下腹部に回される。
そのまま抱き竦めるかのように思いっきりお腹を押さえつけ体を寄せられた。
そう、お腹だ。溜まりに溜まったものがパンパンになって限界を迎えようとしたそこをだ、縁はなんの躊躇いもなく腕で押さえ付ける。
あ、と思った時には全て遅かった。
下着の中、じわりと広がる熱に全身の血の気が引いていく。
待って、待て、我慢しろ。そう思うのに、俺の意志とは反して広がる熱は止まらなくて。


「ぁ、あ……うそ……ッ」


下腹部に広がる染みは腿を伝い、足元まで落ちてくる。
我慢しろ、堪えろ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。
下腹部に力を込めるよう、座り込むがダメだった。それどころか溜まっていた尿はスラックから滴り落ち、足元のフローリングに薄黄色の水溜りを作っていく。


「っ、ぁ、や、見ないで、下さい……ごめんなさい、先輩……見ないで……ッ」


驚いたような縁の目が、自分の下半身から発せられる水音に、頭がおかしくなりそうだった。
だめだって分かってるのに、限界まで我慢していた尿意は止まらなくて、そんな俺の気持ちとは裏腹にすっきりしていく腹の中が嫌で、嫌で、情けなくて。
ようやく尿が途切れたときには何もかも手遅れだった。


「……齋藤君、お漏らししちゃうくらい我慢してたの?」


縁の声が、冷たく響く。絶対に引かれた。高校二年生にもなってお漏らしだなんて、それも学校で。
俺はなんてことをしてしまったんだと恥ずかしさと縁の反応がただ怖くて、何も言えなかった。
嗚咽を漏れ、そこで自分が泣いていることに気付いた。
伸びてきた手に、ぎゅっと目を瞑ったとき。
ふわりと淡い香水の香りが広がる。


「そっか、ずっと我慢してたんだね」


「偉いね。ごめんね、俺が引き止めちゃったせいでお漏らし、させちゃって」優しい声。
排泄物で汚れた俺にも構わず、抱き締め、頭を撫でてくる縁に涙が滲む。


「縁、先輩……」

「誰かに見つかる前に綺麗にしないとな。ほら、齋藤君、立って」


優しい声。手を取られ、そっと立たされれば足元の水溜りが音を立て、余計居た堪れなくなる。


「い、いいです、後は自分でするので、先輩は……っ」

「何言ってんだよ。俺のせいでもあるんだから遠慮しなくていいって。ね?」

「っ、ご、めんなさい……先輩……」

「いいっていいって。……良い物見れたし」


微かに聞こえた言葉に、「え?」と顔を上げれば縁はにこりと笑いかけてくる。
そして。


「ほら、床は俺が拭いとくから君は汚れた服脱いできなよ。ここからならそこの扉が空いてるはずだから。着替えは俺のジャージ貸してあげるよ」

「で、でも……」

「そんな染み作った姿、他の子に見られてもいいの?」


幸い辺りには縁しかいなかったからよかったが、第三者にこんな姿を見られたとしても縁のように寛容な反応をとってくれるとは限らない。
首を横に振れば「だろ?」と縁は笑う。


「なら俺の言うこと聞いときなよ」


後始末まで率先して手伝ってくれる縁の優しさが有り難い反面、何も悪くない縁に自分の下半身のことまでやらせてしまうのが何より心苦しかった。
それでも縁の言葉も最もだ。俺は手短な教室に入り、言われた通りに汚してしまった制服を脱ぐことにした。
居合わせたのが縁でよかった。
そう、思いながら。


…end?
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