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準一が死んだ。
頭から真っ赤な血を撒き散らして、凹んだ頭は中身は剥き出しになってて、変な方向に曲がった首、手足。
さっきまで一緒にいたのに。
隣で笑っていたのに。
準一が、死んだ。
死んだ?本当に。

目の前にいるのは確かに準一の抜け殻であって準一の魂がそこにいるとは考えにくい。そもそも本当にこれが準一なのかどうかすら怪しい。そう考えると動かなくなった意思のない準一だったそれは今はただの肉塊に過ぎないわけで準一が死んだというのには少々語弊があるのではないのだろうか。だって喋らない準一も怒らない準一も動かない準一も準一ではないのだから既に横たわっているこれは準一ではないわけで。

準一だったものが動かなくなった。
そう言うのが正しいだろう。

だから、準一が死んだわけではない。
肉体から抜け出した魂はまだ近くを彷徨っているはずだ。そうに決まっている。だって本で見たんだ。この世は俺達の目に見えないだけで精神世界でもあるのだと。
だから大丈夫、準一はまだいる。そもそもあいつが簡単に死ぬはずがない。
だってあの体が丈夫なのが取り柄の準一が、風邪か流行ってほぼ全滅したとき一人だけピンピンしていた準一が、一緒のもん食って俺だけ腹壊したときだって「体が丈夫なのだけが取り柄だからな」って笑ってた準一が死ぬわけない。


「……そうだよな、準一」


返事は返ってこない。
返ってこない。
帰ってこない。
破損した肉体だけはそこにあるのに、あるのに、あるのに、準一はいない。
魂があったって、精神世界があったって、準一の声が聞こえなければそんなもの。
そんなもの。


「っおぇッ」


腹の奥、込み上げてくる吐瀉物を撒き散らす。
準一ではない。目の前のこれは準一ではない。そう否定しても、頭では理解出来ていた。
これは準一で、準一はもう動かない。
その事実を脳が理解した瞬間、涙が溢れた。
別に悲しくない。寂しいとも思わない。死んで、準一は生まれ変わったんだ。どこかの世界で。俺のいないところできっと楽しく笑ってるんだ。もしかしたら気にしていた怖い顔も憧れていた普通の面になってるかもしれない。あいつのことだからきっと嬉しくて嬉しくてたまんなくてはしゃいでんだろうな。なんて、なんて。
なんて。


「そんなの、意味ねえじゃねえか…………っ」



誕生会の裏側
(どこかにいる君じゃ駄目なんだ)

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