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阿賀松先輩のことは、確かに苦手だった。
だけど、たまに優しい先輩とか、たまにだけど、俺がちゃんと言う事聞いたとき褒められたときは嬉しかった。
先輩のことは怖くてたまらないし、今でもやっぱり怒鳴られるんじゃないかなってビクビクしてる。
その反面、俺を殴って怒鳴って怒ってくれないかなと期待する気持ちもあったりして。


「……すみません、先輩」


もう二度と先輩に怒ってもらえないと思うと少し寂しい気持ちもあるけど、きっとそれも少しの間だけだろう。
だから、恨むなら恨んで下さい。
先輩がいなくなっても先輩のことを思い出せるように。


「やっぱり俺、会長を裏切ることは出来ないので」


さようなら。と告げる代わりに俺は扉を閉めた。その部屋に二度と光が入らないように、鍵を掛けて。
阿賀松先輩の目に、俺の顔だけを焼き付かせるために。
俺以外のものを映させないために。
鍵を掛けた。
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