「名前」

肩を震わせながら泣く彼女の体を、出来るだけ優しく温かく、包み込んでやる。

「うっ…ひくっ…」
「辛かったな」
「カ、カシ……」



ここしばらく、Sランク任務に出ていた名前。久しぶりに会えた時に初めに見たのは、ただただ水色の涙を流す姿だった。それを見てすぐに気付いた、きっと……きっと、彼女はかつてのオレと同じ経験をしてしまったのだろう、と。

「やだっ…やだぁ…うっ…」
「……名前」

抱き締め、その手をぎゅっと握ってやることしか出来ないのが辛かった。


「……カカシ、」
「うん?」

名前は、悲しげに笑ってみせた。

「ごめ、んね…なんか涙、止まらないっ…ちょっと、一人に、」
「だーめ」
「っ!」


一瞬、名前が振りほどこうとした手をさらに強く握り返すと、彼女がびくっと体を震わせた。


「なんでオレに遠慮するの?そんな顔したお前を一人に出来るわけないでしょ。いっぱい、いっぱい甘えてくれて良いの」

「カカシ…」

「お前はもちろん、立派な忍だ。でもそれと同時に、オレの前だけでは、普通の女の子なんだから。
声が枯れて喉が痛くなるまで、泣いてくれたって良い」


堰を切ったように、ぽろぽろ溢れだす大粒の涙。
この涙を拭ってやることが、一生涯オレの仕事だ。

何があっても、彼女の手は離さない。


大声を上げて泣く名前の声を聞くと、自分も彼女やその仲間を思い、心が痛む。その痛みを決して忘れてはいけない、そう考えなが彼女の涙を掬ってやった。


20120409



ひとりにしてと微笑うきみの、震える手を離すものかと。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -