▽ プロローグ──終焉を呼ぶ書
この世界は願いを叶える光によって創られている。
きっと、この先何度も出るフレーズだろうが、覚えていて欲しい。
願いを叶える光の在り方ひとつで世界は喜劇にも悲劇にもなれる。そのため光はいつでも変わることなく、不動で平等で、誰かの希望であり続けなければいけない。
願いが叶うとわかれば、誰だって心の奥深いところから欲がでるだろう。
俺は組織──【創造の王】、そして創造の王のサポートをする組織──【創造のたまご】に所属している。この二つの組織は願いを叶える光を守るために存在している。光はまだ小さく不安定なため、悪魔と呼ばれる負の感情の塊、そして邪な想いを抱える人間から守らねばならない。もしも光が悪しき願いを叶えてしまったら、世界は混沌となり、物語は悲劇へと変わる。いわゆるバッドエンド。まだ幼い無垢な少女に、そんな悲しいお話をして泣かせたくないだろう? 少なくとも俺はしたくない。
もう少し組織の話をしよう。
創造の王は選ばれた少人数で構成されており、世界中に認知された組織だ。その地位は一つの独立国家と変わらない、否、それ以上の特権と権利を持つ。ギルド、マフィア、そういった組織でこれほどの地位と権利をもつ組織はここだけだろう。まあ、世界を守っていると言っても過言じゃないから、それほどの特権や権利が許される。まあ、もちろん批難するものや反対する国だってある。傍から見ると光を独占しているようにも見えるから。後ろ指を指されたとしても俺たちは願いを叶える光を守るのだ。この世界を維持するために。
……などといい言葉をつらつらと並べたが、王やたまごになる理由なんて人それぞれだ。王としての権利が欲しい。トップに立つ組織に入りたい。悪魔を倒したいから。人の役にたちたいから。守りたい人がいるから。etc……本当に人それぞれだ。
では、人ではない俺と、化物と呼ばれる俺の兄はなぜ王になったのか。答えはいたってシンプル。だが決して揺るがない。俺たちは光を胸に宿す少女のためにこの道を選んだ。大切な少女──家族がひとりぼっちにならないように、守るため、笑ってくれるため。そう、王である理由なんてそれだけで十分なんだ。これからもずっと。いつだって、どんなときだって、俺は少女の味方で、少女の兄であり続ける。
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