創造グループ | ナノ


▽ プロローグ_それでも私は願う


『反転。アレに力を渡すな。お前のものにしてしまえ。そうすればお前の願いも叶う』
「黙れ。何度言われようと断る」
『残り少ない命だ。好きにしたっていいじゃないか。事実、アレに力を渡すより、アレの力をお前が手にしたほうがよっぽど世界の為になるだろ?』

人の顔を覗き込みながらニタリと笑う。ああ、本当にこいつは気味が悪い。それに先ほどから人の神経を逆撫でしてきて腹ただしい。
「人の妹を気安くアレと呼ぶな。憂は物ではない」
『ああ、そうだったな。アレはお前と違って本物だったな。か弱くって可愛くってどうしようもない人間だったなぁ? 反転。お前がいなくなったらアレはどうなるんだろうなぁ? 悲しむか? 泣くか? 喚くか? なあ、一体どんな悪魔を生み出すだろうなぁ』

愉快そうに笑いながら私の傷口に指を入れて抉り掻き混ぜる。口から血が吐き出て咳き込んだ。

「……憂は、悪魔を生み出さない……みんながいるから私がいなくても乗り越えられる。私たちの妹は弱くない」

息絶え絶えに応えるとプレジールはつまらなさそうな顔をした。

『あっそ。ま、お前の言う通りあんな純粋の塊から悪魔を生み出せるわけもないな。お仲間が生きてる限りな』
「私の仲間を侮るな……そう易々とお前の手に堕ちはしない」

プレジールは首を傾けた。こちらに哀れみの目を向けている。

『わかっていないな。人間は弱い。感情を持っている。だからこそ悪魔が生まれる。反転、お前は馬鹿じゃあない。もうわかってんだろ。お前は人間に近づきすぎてる。それで願いを叶えないだなんて、よく言えんな。本音が溢れ出てきてんだろ? 人間みたいに感情が疼くんだろ?』
「違う。私は人間ではない」
『悪魔から見ると哀れで滑稽だ。みんなと同じように生きたいんだろ?』
「……違う」

言うな。言わないでくれ。

『俺に任せろよ。願いを叶えてやる』
「…………止めろ」

そんなこととは裏腹に、心は揺らいだ。もう嘘はつけない。そう、私は人間に近づきすぎてる。そのせいか、今までできた自制がきかない。
今までに見たことのない優しい顔がそこにあった。私から抜け落ちた存在に誤魔化しなんてきかない。もう仲間と共に生きられなくても。私が私でなくなるのだとしても、もうどうだってよくなった。

それでも 私は みんなと同じように生きたい。

これは記憶を忘れてしまう私が、忘れることなくずっと願い続けていたことだ。死にかけていた体から微かな声をふるわせた。

「……本当に、お前などに私の願いが叶えられるか?」

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