創造グループ | ナノ


▽ 初めまして小さな光


下へ降りてみると既に朝食の用意はしてあった。香ばしいパンや憂が入れている珈琲の香りが花をくすぐる。

「あ、幻影。珈琲入れてるから顔洗ってきたら」
「ああ、ありがとう」

憂もだいぶ料理が作れるようになったな。香りだけで上達がわかる。憂の飲み込みの速さや成長スピードに感心して、詰めたい水で顔を洗う。さっぱりして戻るとちょうど珈琲も入れ終わった憂が椅子に座っていた。対面に座り手を合わせる。

「いただきます」

手を合わせて食べ始める。一人で暮らしているときはしなかった動作は憂と暮らし始めていつしか身についた。兄である反転(はんてん)から教わったのだろう。──彼の本名は知らないため、ここでは仕事名義を使おう──人ではない反転がこういった挨拶やらをきちんと教えていたのは意外だったな、といつも思う。
などと今日も同じことを思っていると、憂が機嫌よくしているのが見えた。飲みかけの珈琲を置き聞いてみる。

「やけにご機嫌いいな」
「だって今日はみんなに会いに行くんだもの! 反転に会えるし、嬉しいの!」
「なるほどな」

ああ、なるほど、それでか。みんな、とは俺たちの仕事仲間のことだ。
俺たちは【創造の王】と呼ばれる組織に所属している。
創造の王とは、世界を支える『願いを叶える光を守る』ための少人数で構成されている組織だ。
この世界には人の負の感情から生まれる悪魔と呼ばれる存在がいる。俺たちは王としての称号(俺ならば幻影、憂はまだ与えられていない)を与えられ、その悪魔や悪意を持った人間から、願いを叶える光、すなわちこの世界を守るために動く組織だ。王はさまざまな権利を持ち、一つの国家として世界中に認識されている。まあ、光を守るという特別な仕事を任されていることと、地位が高いこと以外はいたって普通のギルドと変わらない。

「えへへーみんなに会えるの楽しみだなー」

憂も俺も反転も創造の王だ。創造の王は普段、自分が任された区域で仕事をし、定期で拠点の城に集まる。簡単に会える奴もいれば、1年と会えない奴もいる。憂は皆が好きだから喜びでいっぱいなんだろうな。小さな口にパンをほおばってリスみたいだ。

「急いで食べると喉に詰まらすぞ」

はあいと返事した憂をほほえましく思いながら朝食を食べていく。

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