最近幸村先輩が冷たい。というか避けられている気がする。気がするだけではなく確実に避けられている。

「僕書類持ってくる」
「僕も手伝います」
「いいよ、僕一人でやるから…!」

生徒会役員でもないのに放課後は生徒会室に入り浸っている僕。幸村先輩にくっついている僕を生徒会長は嫌な顔もせずに放置してくれている。

「幸村先輩」
「ついてこないでっ」

幸村先輩は駆け足で行ってしまった。

何かしてしまったんだろうか。自分では全く覚えがない。いつも一緒に居たのに今までこんなことはなかった。幸村先輩が嫌がるようなこと?

「おい、何かあったのか?」

気付くと生徒会室の皆さんが僕に視線を投げていた。

「いえ、覚えがなくて…」
「ふーん…」
「僕、追いかけてきます」

軽く会釈して生徒会室を飛び出す。廊下には女子生徒がいたけどそれを軽く避けながら職員室へ向かった。書類を取りに行くなら職員室だろうから。

けれど幸村先輩は職員室には居なかった。何となく嫌な予感がして校内を探し回る。職員室とは違う階も他の教室も。まだちらほらと生徒の残る校内を走り回って、やっと幸村先輩を見つけたのは先輩のクラスだった。

「幸村先輩」

扉から声を掛けると先輩はビクッと肩を跳ねさせた。

「叶くん…」

ゆっくりと振り向いた幸村先輩は眉を下げてとても困った顔をしていた。

「幸村先輩、僕何か嫌なことしましたか?幸村先輩の気に障るようなことしたんなら謝ります」

近づくと今度は睨みつけてくる。僕より随分と背が低いから上目遣いになってさほど怖くはないが、何か怒っていることは分かる。

「叶くんはさ、僕が女の子みたいだから一緒に居るんだよね?」
「はい、まぁ…」
「僕は男らしくなりたいんだって知ってるよね?」
「はい」

キッと眉がつり上がって、すぐまたさっきの困り顔。

「僕と叶くんは友だち…?」
「え…?」

しゅんと悲しげな顔をして肩をうなだれてしまう。日頃から女性のような幸村先輩がますます小さく頼りなげで、思わず抱きしめたい衝動にかられたけれど自分の手のひらをぎゅっと握り締めることで堪える。
幸村先輩はやっぱり脆くて弱いように見えるから。

「僕は叶くんのこと友だちだって思ってるけど、叶くんは訓練の為に僕と一緒に居るの?」
「…」
「僕、叶くんと友だちだから一緒に居たいよ」

……何言ってるんだこの人!可愛い顔で背も低くて脆くてはかない女性のようなこの人がそんなことそんな可愛いこと言っていいのか!

「僕も幸村先輩と友だちだと思ってます。先輩のことちゃんと好きです」

フードを脱いで幸村先輩の両肩をしっかりと掴む。これで僕の本当の気持ちが伝わるだろうか。

「え…。スキとか言わないでよ恥ずかしい!」

見る間に真っ赤になる先輩の顔。それがすごく可愛くて、自分の顔も赤くなっている気がしたけれど微笑んでみせたら先輩もエヘヘと笑ってくれた。

「生徒会室戻ろっか」
「はい」




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