※ツナ女体化でお隣さんパロ
前を読まなくても全然大丈夫な内容ですが、一応浴衣の続きです。


右手に金魚すくいで取った赤い金魚二匹(といっても一匹も掬えなくておじさんがくれたんだけど)をぶら下げて、左手には黄色い巾着。母さんが帯とお揃いで買ってくれたそれは浴衣と同じで今日初めて使うものだ。ザンザスに買ってもらったこの藍染めの浴衣と相性が良くて、着付けてもらった時に母さんも「素敵よ」と言ってくれた。

近所の神社で毎年行われる夏祭りには沢山の出店が並んで目移りしてしまう。かき氷も食べたいしあっちの焼きそばも美味しそうだし、向こうのあんず飴も美味しそう。ああ、チョコバナナも食べたい。
友人たちと来るとこれでもかとばかりに色んなものを買って食べてしまうけれど、今年は違う。隣とまではいかないけれど俺の少し前にはザンザスがいて、たまにこちらを振り向いてくれる。

「おい、」

後ろ姿をじっと見ていたらザンザスが振り向いた。

「なに?」
「金魚すくいだけでいいのか?何か食べるものとか」

恥ずかしい!俺が色んなものに目移りしていたことがばれていたらしい。
立ち止まっているザンザスに追い付いて、だけど腕を組むとか手を繋ぐのは駄目な気がして伸ばした左手を下ろした。

「じゃあ…あんず飴」

すぐ近くにあった出店をちらりと見てそう言ったら、ザンザスは微笑んでそっちに向かって歩き出した。俺もすぐに追いかける。
巾着からお財布を出そうともたもたしているうちにザンザスがあんず飴とみかん飴(こっちは水あめが真っ青だった!)を買ってしまって、俺に差し出してきた。

「どっちでもいいぞ」
「ありがと」

みかんの方を選んだらザンザスがクスッと声を上げて笑うから、なんとなく恥ずかしくなった。
立ち止まって食べている間なんとなく向かい側の射的の景品を見ていたら、真ん中に飾ってあるくまのぬいぐるみがすごく可愛くてついついじっと見つめてしまっていた。そしたらいつの間にか俺より先に食べ終わっていたザンザスが射的の出店の前に行ってしまうから驚いた。
一発で俺が見つめていたぬいぐるみを撃ち落として、あと残り2発あるのに返却してしまった。

結局そのあと我慢出来なくてチョコバナナも買って、もぐもぐしながら歩いていたらザンザスが境内の向こうの方に歩いていってしまうから急いで追いかけた。
こっちの方は出店も出ていないし、喧騒も遠くなっている。ちょっと開けたところに出たら嘘みたいに誰も居なくて、食べ終わった割り箸をどうしたものかと金魚の袋と一緒に持ってきょろきょろした。この神社にはよく来ているのにこんなところには来たことがなかった。

「綱吉、」
「え…」

名前を呼ばれて振り向いたザンザスの後ろに大きな音とともに打ち上げ花火。
大輪の黄色い花が咲いて、きらきらと輝いて、一瞬後には真っ暗な夜空に散っていった。

「…うわ……」

遮るものの無い夜空に次々と大輪の花が打ち上げられる。
すごく綺麗で、声にならない。思いっきり首を上げて花火を見上げる。
そしたら急に左手が握られたからびっくりして見ると、その手は勿論ザンザスの手で、でもザンザスは花火を見上げていた。俺は花火を見上げることを忘れて、ザンザスを見つめた。音は聞こえるし視線の端にきらきらが映ったけれど、花火が終わるまで俺はずっとザンザスを見つめ続けた。
ザンザスは何も言わずにずっと花火を見上げていて、でも一度だけぎゅっとその手に力が込められたのを感じた。




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