俺を抱きしめてる腕が温かくて余計に涙が溢れた。安心感と比例するかのように自分の感情がどっと溢れ出て、子供のようにしゃくり上げて泣いた。

「大丈夫、大丈夫だから」

杉山の声が体を包む。それはひどく優しくてもっと涙があふれ出して泣き続けた。本当の時間は分からないがそれはかなり長く感じられた。
ようやく涙も止まり胸で大きく深呼吸すると彼もそれに気付いて俺の体に回されていた腕をゆっくりと解いた。おずおずと瞳を上げると未だ顔はすごく近くにあって、柔らかな杉山の双眼と視線が絡んだ。

「落ち着いたか?」
「……あぁ」

優しい声、優しい視線。すごく安心する。なんだか昔に戻ったような気分だった。昔の自分はもっと尖っていて自信もあって、今みたいに弱くは無かったけれど。
黙ったまま見つめられるのが居心地が悪くて、何か話さなくてはと焦る。

「なんか、ごめん…格好悪いとこ見せちまって」

顔を上げたまま彼に笑ってみせた。口に出すと自分の所業を再確認させられて、本当に自分は何をしているんだと恥ずかしくなる。

「今の、忘れて。ほんと…」

恥ずかしい。そう言って体勢を立て直そうとベッドについていた手に力を込めて立ち上がろうとするつもりが、杉山の体が邪魔で動けない。それどころか彼の表情がいつの間にか少し険しいものに変わっていた。杉山の口が何かを紡ごうと開かれるのを何故かスローモーションのように見ていたら、背中に何か嫌な感じがして彼の言葉を遮った。

「――っ」
「っ杉山!おまえいつまでそこに居るんだよ、いい加減退けって。もう大丈夫だからっ」

よく分からない嫌な予感に早口になる。彼の言葉が聞きたくなかった。
不安で嫌な予感。彼から発せられる言葉は聞いてはいけない。自分の中のナニカがそう警戒音を鳴らしている。それはもう煩いほどに。

「なぁ、すぎや」
「俺さ」

彼の視線が痛い。突き刺さるほど真剣で鋭い。もう浴びたくない。警戒音が煩い。

「俺、」

またゆっくりと彼の両腕が伸びてくる。ビクッと反応する俺をよそに彼の両の手は俺の頬のすぐ横を通り過ぎ壁についた。俺は完全に捕らえられてしまってしまう。見上げるようにして合わせられる杉山の鋭い視線。

「おまえのことが好きだ。」

ナニカが、弾ける音がした。






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