「えー、ほんとかよ」
「あぁ、恥ずかしいからさ。持ち歩いてないよ」

俺は嘘をついた。財布に挟んだままになってるプリクラも、二人で自撮りした写メもあった。けれど何故だか彼には見せたくなかった。

「あ、」
「え?」

鞄から携帯を取り出して杉山は笑う。折りたたみのそれを片手で操作しつつ、テーブルの上に出してあった俺の携帯を指差した。

「アドレス、交換しようぜ!昨日教えてくんなかったしさ」
「あ、あぁ…うん」
「よし、じゃあ先送るから受信して」

慌てて俺も操作する。赤外線受信、赤外線受信…

「いい?」

お互いの携帯を向かい合わせてまずこちらが受信して、それから俺のを送る。俺の携帯に大野のアドレスが登録される。昨日から目の前の彼に会ったことをあんなに後悔していたはずなのに。

「メールするから、また遊ぼうぜ!…俺部活であんまり時間ないけどさ」
「あぁ、俺も、するよ」

その日はそれで別れた。





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