練習試合を見に行った次の日。俺は今までにないほど後悔していた。試合を見に行ったこと、彼に会ってしまったこと、彼を拒絶してしまったこと。全てに後悔をしていた。朝から授業に集中出来ず、頭を巡るのは昨日のことばかり。もうほとほと疲れてしまった。
何とか授業も終わり俺は荷物をまとめて下駄箱へ下りた。部活動中の生徒を邪魔しないよう校庭の端を通って校門へ。しかし校門の前に数人の女子生徒が固まっているのが目に入り、少しばかり首を傾げた。校門に誰か居るのだろうか。そんなに興味もなく通り過ぎようとしたとき、
「大野っ」
声を掛けられて。振り向くまでもない。昨日からずっと考えていたのだから。
驚いて見開いた瞳をすっと戻し、ずれた眼鏡を左手で直す。そしてゆっくり振り向いた。
「……杉山」
ずっと屈み込んでいたのか彼は鞄を地面に置いたままぐっと伸びをした。小さく声をあげて、ニカッと屈託無く笑う。
「……部活は?」
「サボった。てか、6限からサボった」
うちの制服は黒の学ランだから、杉山のグレーのブレザー姿は目立っていた。薄茶色をした彼の頭髪も原因の一つだろうか。校門を出て来た生徒たちが俺たちを避けるように通り過ぎては振り返ってこちらを見ている。
「おまえ、これからヒマ?」
「え?」
掛け声とともに鞄を拾い上げ、リュックのように背負う。あまり中身が無さそうなガシャッ、という音がした。
「どっか行こうぜ!どこでもいい、ゲーセンとかファミレスとかさ」
今一番会いたくなくて、ずっと会いたかった彼の言葉に無意識に頷いてしまったらしい俺は、彼の笑顔につられてつい微笑んでしまった。彼はきょとんとしてもう一度笑みを戻す。
「やっぱ笑ってた方がいいぜ。…よかった」
さ、行こうぜ!と鞄を持った右腕を掴まれてびっくりしていると彼は何でもないようにそのまま歩きだす。掴まれた右腕から引き摺られるようにして俺も後に続いた。
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