俺は夏も嫌いじゃないけど冬の方が好きだ。と言ったら意外だと言われた。

「あんたって夏好きそうなのにね。お祭りとかはしゃぐタイプじゃない?」

放課後。俺と桂木だけ残った部室で俺は一人でゲーム。桂木も携帯をカチカチ鳴らしている。

「夏って湿気ヒデーし、この俺様が汗だくってのは世の女性たちが泣くだろ?」
「ハイハイ。あんたってそーいう奴よね。」

桂木は携帯を机に投げ捨てて扇風機の前に陣取る。クーラーは付いてるけど設定温度が高いからあんまり意味無くて、いつも扇風機の前は争奪戦なんだよな。

「桂木!そこにいると俺様に風が来ねぇだろ」
「っうっさいわねー、暑いのは皆一緒なの!だいたい暑いの嫌なら非番なんだから帰りなさいよ!」
「だって久保ちゃんがまだ帰ってこねぇから」

俺だって今すぐ家に帰ってすげー涼しいとこでゲームやりてぇよ。だけど今日は久保ちゃんが当番だから仕方なくここで待ってやってるんだ。久保ちゃんのパートナーが藤原だってのがめちゃくちゃ気に食わねぇけど!

「時任ってほーんと、久保田君のこと大好きよね」「んー……ってあぁ!!っだよ、負けた!!」

話していたら気が散って失敗しちまったじゃねぇかよ。俺はイライラして勢いよく電源を切った。せっかくいいとこまで進んで立ってのに。
と同時に部室の扉が開いた。

「校内巡回行ってきましたー」
「異常ナシ」

藤原と久保ちゃん。久保ちゃんと、藤原。

「あれぇー、時任先輩まだいたんですかぁ?」

藤原が俺を見つけ、久保ちゃんの右腕にするりと腕を通す。

「今日は僕と久保田先輩 二 人 で 当番だったので、先に帰ってくれてよかったのに。ねぇー久保田先輩」
「うるせぇ!久保ちゃん帰んぞ!!」

俺は二人分の鞄をひっつかんで藤原とは反対の腕を引っ張った。
藤原が何か叫んでそれを桂木が煩いと言って窘める。そんなやり取りを背中で感じつつ、俺は久保ちゃんの左腕を掴んだまま部室を出た。さすがに後ろ向きじゃ歩きにくいだろうから腕をはなすと、今まで黙っていた久保ちゃんが俺をじっとのぞきこんだ。

「な、なんだよ」
「んーん、なんでも?」

口端だけ上げてにやりと笑って、今度は俺を置いて行ってしまう。

「ちょ、待てよ久保ちゃんっ」

追い付くと自分の鞄を俺の腕から抜いて、ポケットから煙草とライターを取りだし、それからもう一度仕舞いなおした。

「ねぇ、コンビニでアイス買って食べながら帰らない?」
「さんせー。俺も激暑くて溶けそう!」

下駄箱で靴を取り換えて校舎を出る。校舎内も暑かったが外は容赦なく照りつける太陽で余計に暑い。

「あ、ねぇ久保ちゃん。久保ちゃんは夏と冬どっちが好き?」

口寂しいのかぺろりと舌で唇を舐めて俺を振り向く。
なんだかその仕草がセクシーだなと思った。

「そうねぇ…冬かなぁ」
「だよな、俺も冬の方が好き」

だって冬の方が久保ちゃんの近くにいられるから。
だから夏の室温も22度。寒いくらいの方が夏でもひっついていられるだろ?




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