TRRRR...
『――ツナヨシか、』
携帯を貰ってから、初めて俺から掛けた。
いつもは俺がメールして返信をくれるか電話をしてくれるザンザスに初めて電話をした。
「あ…ザン、ザス?」
ふつう電話って出て第一声は「もしもし」じゃないのか?
予想外に名前を呼ばれたからつい言葉が出て来なくて、分かりきったことを聞いてしまった。
だってこの声。間違えるはずがない。俺の大好きな、体に染み入るような優しい低音。
『どうした?電話なんて珍しいな』
「う、うん。…あ、今大丈夫?」
そうだ。あんまり嬉しくて勢いで電話しちゃったけど、ザンザスは俺と違って忙しくて、しかも日本とイタリアには時差があるんだった。だからいつもメールにしてたのに。
『あぁ、何かあったのか?』
優しい声に安心する。
「あ、あのねっ、冬休みに俺、そっちに行くことになったんだ!」
『冬休み?』
「そう、冬休み!だから」
『冬休みはいつからだ』
「え?12月だけど…」
なんだろう。ザンザスってもしかして冬休みを知らないとか?でもそっか、ザンザスって九代目の実子として育てられたわけだし、学校なんて行ったこと無いのかも。
それともイタリアには冬休み無いとか??
「リボーンも一緒だから忙しそうだけど、絶対会いに行くから。今度は俺がザンザスに会いに行くから待ってて」
本当は忙しかったのか、その後結構すぐに切った。
短い時間だったけど、俺はザンザスの声が聞けて嬉しかったし、その…切る前に「愛してる」って言ってくれたし。
一週間後。
「え、なんで?」
なんでこの人ここに居るの?いや、嬉しいんだけど、冬休みに会いに行くからって、待っててって言ったよね?
俺が学校から帰ってくるとザンザスが俺の部屋に居て。ベッドに横になって目をつぶって、寝てるのかな?
あんまり見られない寝顔だから、頬にそっと手を伸ばした。
「!?」
伸ばした手を掴まれて、反射的に引こうとしたけど駄目。
さっきまで閉じられていたルビー色が俺を見てる。
「なんだよ、起きてたの」
「待てなかった」
「え?」
「お前の声を聞いたら、冬までなんて待てなかった」
「な!!」
なんてこと言ってんだこのイタリア人!!
顔が真っ赤になって、でも手を掴まれてるから逃げられなくて、俺は顔を隠すために仕方なくザンザスの胸に顔を埋めた。
ザンザスが笑うのが分かる。ずるい。俺ばっかり振り回されて、俺ばっかり余裕が無いみたいじゃんか、ばか。
待てないよ
離れた瞬間から、会いたくてたまらないのに
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