※元就先天性女体化


テレビを見ながらアイスを掬う手を止めない元就を後ろから抱えるように腕を回していた。この体勢がやりたいが為にホットカーペットを購入した今年の冬。寒がりの元就はすっかりこれを気に入って床に座るようになった。安い買い物だったと、本当に心から思っている。

「なぁ今日泊まってくだろ?何食いたい?」

腰にぎゅっと回した腕にほんの少しだけ力を込めて尋ねる。黒檀の髪に顔を埋めてさらさらの感触を楽しんでいると、元就の頭が急に後ろに倒されて思わず声が漏れた。その声に反応することもなく元就はあっさりと頭を戻す。

「ロールキャベツ」
「ロールキャベツ?お前好きだっけ?」

左肩に顎を乗せて顔をのぞき込むようにすると、アイスはあと少しになっていた。溶けかけて甘い匂いを放つそれがスプーンに掬われて元就の口に含まれる。
首筋にちゅ、と口付けても無反応に視線はテレビへ注がれたままなのが気に入らなくて、俺は服の裾から手を入れた。外気よりも少し冷たい俺の手が肌に触れると、腕の中の体がほんの少し跳ねた。

「キャベツは乳が大きくなるそうだ」

手をより差し込んで今まさに下着に手を掛けようとした時に無感情の声が上がり手を止めた。

「え」
「キャベツを食べると乳が大きくなると聞いたのでな。貴様デカい乳が好きであろう」

思わず体を放すと、元就が左肩口から振り向くようにしてこちらを見た。その表情は至ってふつう。なんの感情も読めない。
もしかして嫌味か?それとも抗議か?と思うものの、元就の顔からそういった感情は見られなかった。

「なにを呆けた顔をしている」

今度は眉間にきゅっと皺が寄ってこれは言わずもがな怒ってる顔。そう、今なんだよ今。この怒った顔したのは今。

「あのよ元就、」
「なんぞ」

もう一度抱きつき今度は右肩に顎を乗せる。元就は視線だけ俺のことを見た。

「キャベツ食っても胸でかくなんてなんねぇぞ」
「何を。幸村が言っておったぞ」
「あいつは…確かにデケェな…」

いやいや待て待て俺、そうじゃねぇだろ。

「じゃなくて、俺お前に胸でかくなってほしいとか思ってねぇぞ?」
「貴様、伊達と話していたではないか」

政宗?急に出てきた名前に驚いた。政宗とそんな話したっけ?……ああ、そういえば二・三日前に政宗と家康とそんな話をしたような、気がする。
これってもしかしてヤキモチってやつじゃねぇの?こいつにそんな可愛らしい感情があったことに驚きだ。だけど、

「お前も可愛いとこあんじゃねぇか」
「なんのことぞ。離れろ暑苦しい。」

無自覚なところがまた可愛い、なんて言ったらそれこそもっと怒るだろうから今度は右頬にキスした。元就の視線はもうテレビに戻っていて、俺は仕方ないとため息をついて立ち上がった。このため息はもちろん幸せのため息だ。

「買い物行こうぜ。キャベツも肉も大してねぇし、あ、スープは何味がいい?」
「行かぬ、寒い。貴様一人で行ってくいればよかろう」

元就は体温が離れて寒く感じたのかソファーの上のクッションを引き寄せる。

「なんでだよ、お前も来るの!飯作んの俺なんだからお前も働け」
「……ふん、仕方ない」

クッションを取り上げて片手を掴んで立ち上がらせる。嫌そうに、けれど本気で嫌がるそぶりは無い。
さて、スーパーで甘いものもついでに買ってきましょうかね。




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