一体いつからだろう。俺は獄寺のことが好きだ。いつの間にか獄寺が好きになってた。
いや大丈夫、分かってる。獄寺は男で、俺も男。分かってるけど、どうしようもないんだ。

数日前ツナから貰った夏祭りのメール。今日17時にツナの家に迎えに行くことになってる。並盛神社の夏祭りなんて久しぶりだし、三人で浴衣を着て行こうという話になって、俺も獄寺も持ってないしキレないからツナんちのおばさんに着せてもらうことになってる。獄寺の浴衣か…絶対似合うんだろうな。あ、勿論ツナも。
ちょうど17時に俺はツナの家に着いた。もう家の前には獄寺が来てた。

「よ、獄寺!」
「てめぇ山本!遅ぇんだよ」
「わりぃわりぃ」

獄寺も俺もツナも、全然変わらない。いや、俺は変わってないふりをしてるだけだ。でも三人の関係は変わらない。
獄寺は相変わらず緊張した面持ちでチャイムを鳴らす。そしたら扉の奥からおばさんの優しい声とともにスリッパのパタパタという音が聞こえる。次いで扉が開く。

「いらっしゃい、二人とも」
「ご迷惑お掛けします、お母様」
「こんちはっス」

ぺこりと俺がお辞儀をすると、獄寺も深々とそりゃあもうすげー勢いで頭を下げた。


ツナのおばさんはいつもの優しい笑顔で俺たちを迎え入れてくれて、まずは獄寺から着付けてもらう。
その間俺はリビングで出してもらった麦茶を傾ける。それにしてもツナはどうしたんだ?全然降りてこないのな。
シュルシュルと衣擦れの音が聞こえる。おばさんは手際よく着せてくれている。

「そうだ。ツッくんたらね、さっきザンザスくんが来て、先に二人でお祭りに行っちゃったのよ。」
「え!?」
「…お母様、今、何と仰いました?」

俺と獄寺は同時に声を上げた。俺は驚いた声そのまま、獄寺の声は幾分か落ち着いていたけど震えている。

「だからね、10分くらい前にザンザスくんがお迎えに来て、二人でお祭りに行っちゃったのよ。ツッくん二人とお約束してたんでしょ?」

獄寺の着付けが終ったらしく、おばさんは俺のことを呼んだ。でも俺たち二人はそれどころではなかった。
ザンザスが、ツナを向かえに来て、二人でお祭り?
どれ一つを取っても素直には飲み込めない言葉だ。そりゃザンザスとは幾度かの渡伊で少しは仲良くなったって聞いてたけど。

「おいっ山本!すぐ追いかけるぞ!」

獄寺はつんのめりそうになりながら利き足に力を込める。
それを止めたのはおばさんだった。

「大丈夫よ。同じ場所に行くんだからすぐ見つけられるわ。はい、山本くんも早く着付けちゃいましょうね」

ツナのおばさんには弱い獄寺がぐっと黙る。
正直、ちょっと期待した。ツナがザンザスと二人で行ったのなら、俺は獄寺と二人。それも悪くない、いやむしろチャンスかもしれないと。

「獄寺、俺すぐ着せてもらうから、ちょっと待っててくれな」

ニカッと微笑むと獄寺はチッと舌打ちを一回。でもおばさんがいるからそれ以上の悪態はついてこない。
俺はおばさんに浴衣を着せてもらいながらこれからのことを考えた。初デート(思ってるのは俺だけだけど)が浴衣で夏祭り、しかも花火大会までなんて絶対ツイてる。

俺は変わった。
ツナも何か変わったのかもしれない。
じゃあ、獄寺も少しは変わったっていいんじゃないかな。






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