「あれ、また来たの?取り立て屋ってのは随分暇な職業なんだねぇ。それとも、それももうクビになったのかな」
「てめぇが大人しくしてりゃ、クビになることはねぇんだよ」

臨也が玄関の扉を開けると、そこには静雄が立っていた。
ここのところ毎日の様にやって来ては特に何をするでもなく夜まで臨也の部屋で時間を潰し、帰って行く。そんな静雄に臨也は初めの内こそ嫌味を言ったり喧嘩を仕掛けてみたり、はたまた追い返そうとしてみたりしていたが、何をしても乗ってこない静雄に諦めて変に絡むことをやめた。
けれど出会ってから今まで臨也が彼に嫌味を言うことこそが常だった為、会話は相変わらずこんな感じである。

「門田も来てたのか」
「入れ替わり立ち替わり、ほんと俺ってばモテモテだよね」

リビングのソファーには既に門田が座っていた。静雄はその向かい側に座る。
臨也はパソコンチェアーに座ってデスクに肘をつき、はぁ、と大きくため息を吐いた。

「モテモテなのは嬉しいんだけど、むさ苦しい男二人に囲まれて一日過ごす俺の気持ちにもなってよ」

2人は臨也の言葉には何も反応しない。臨也はまた盛大にため息を吐いた。

「あ、ドタチン。コーヒー淹れてくれる?確かさっきもう無くなりそうだったんだ」
「あぁ、分かった。静雄も飲むか?」
「シズちゃんはあまーいカフェオレの方がいいんじゃない?」

臨也のバカにした口調に静雄は眉間に皺を寄せて鋭い視線を投げたが、それに怯むどころか臨也は口角を上げて無言で笑った。いつもであれば静雄は間違いなく立ち上がって臨也の胸倉を掴むところだが、静雄の手は皮張りのソファーをギリギリと掴むだけだった。破れなかったところをみると、それもだいぶ手加減しているようだ。

門田が立ち上がってキッチンへ消えて行くと、臨也もそれを追うように立ち上がった。
静雄がチラリと視線を動かすと臨也はめんどくさそうに「トイレだよ」と捨て台詞の様に吐き捨てて部屋を出て行った。

静雄が手持無沙汰に携帯を弄っていると、暫くして門田が戻ってきた。
手にはトレーと、その上に家主用のものであろうマグカップと来客用のソーサー付きのコーヒーカップが一つずつ。それから角砂糖のビンが載せられていた。

「臨也はどうした?」
「…さっき便所って言ってたぞ。」

静雄はそう返してから眉を寄せた。
そういえば、臨也が部屋を出て行ってからもうどのくらい経つ?用を足して戻ってくるのにこんなに時間が掛るだろうか。否、少なく見積もっても20分は掛かっている。そんなに時間が掛るわけはない。
脳裏に嫌な予感が湧く。静雄は勢いよく立ち上がると焦る気持ちのままに部屋を出た。

廊下に出た瞬間、声がした。





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