今日はツっくんとデートの約束をした日。
私もツっくんも忙しくて、まともに顔を合わせるのは二週間ぶりとなる。


ツっくんは午後一時に迎えに来るということで私は自分の家の玄関で今か今かと待ち構えていた。
すでに午後一時を十分経過している。


ツっくんに会ったら何て言ってやろう。
何しろ二週間ぶりに会えるというのに遅刻されたのだ。
少しは意地悪してやらないの気が晴れない。
「久しぶりに会える日なのに遅れるなんてひどいよ」
「ツっくんにとって私はその程度なの?」


・・・・なんて意地悪言ったらツっくんはどうするかな?
昔のツっくんみたいにあわあわするのかな?
ああツっくんに会うのがますます楽しみになってきた。


「ツっくんまだかなー」
誰にも聞かれることのない言葉を呟いた瞬間、玄関のチャイムが鳴り響いた。
それと同時に昔から聞き慣れている、だけど少し男らしくなった声が玄関から聞こえてくる。


「京子、いる!?」
「・・・・ツっくん」
「ああよかった・・・・!遅れちゃったから怒って会ってくれなかったらどうしようかと・・・・っ」


私がドアを開けると、冬だというのに息を切らして顔を真っ赤にしているツっくんが屈んでいた。


少しは拗ねて彼を困らせてやろうなんて考えていた私だけど、ツっくんのこんな姿を見たら何も言えなくなってしまう。
私は言おう言おうと思っていた意地悪な言葉を飲み込んで、ツっくんにニッコリと笑いかけた。


「ツっくん走ってきてくれたみたいだから許すよ」
「ごめん!次は気をつけるから!!」
「うん」


屈んでるツっくんの目の前に屈んで頭をよしよしと撫でる。
ツっくんは私の目を見て、それから顔を真っ赤にしてツっくんの頭に置いてある私の腕を掴んだ。


「京子・・・・いつまでも子供扱いしないでよ」
「だってツっくんはツっくんだもん。中学生の時から変わらないよ」
「ちぇ」


ツっくんは口をアヒルのように尖らせて私から視線を逸らした。
どんなに仕事が忙しくてなっても、こうやって昔と変わらないツっくんを見ると安心する。


だけど、それと同時に少し不安にもなった。
ツっくんの左手の甲に白い包帯が巻かれていたからだ。
二週間前はこんなもの無かったのに。


ツっくんの仕事は滅茶苦茶危険で、だから私はツっくんの仕事の内容はあまり知らない。
聞いてもツっくんは答えてくれないから。


だけどツっくんが私を大切にしてくれてるのは伝わってくるし、自分の仕事に巻き込みたくないから私に何も言わないのは分かってる。


だからせめてツっくんが休みの日は私が癒してあげたい。
普段構ってもらえない分構って欲しい。
そう思って、2人とも休みが取れた今日会う約束をしたのだ。


私が包帯の巻かれた手をじっと見つめていると「京子?」とツっくんが問いかけてきた。
その声の無垢さに胸が締め付けられる。
こんなに優しい人がどうしてマフィアのボスなんだろうって。


「京子?どうしたの?」
「・・・・ツっくん、無理・・・・しないでね」
「え」
「必ず私のとこに・・・・皆のとこに帰ってきて」


私の言葉を聞いてツっくんは目を見開いた。
だけど私がどうしてこんなことを言ったのか気付いたらしい。
ツっくんは包帯の巻かれた手で私の手を包み込んで笑って応えてくれた。


「京子や皆が待ってる場所に俺は帰るよ。必ず帰るって約束する」
「本当?」
「俺の言うことが信じられない?」
「・・・・信じる」


私が小さく頷くとツっくんはにっこりと微笑んだ。
いくつになってもツっくんの笑顔は変わらない。
私が大好きな、安心させてくれる笑顔だ。


ツっくんは腕にはめている時計を確認すると「げ!!遊ぶ時間が無くなっちゃうよ!」と言って立ち上がった。
私はその場に座り込んだままでツっくんを見つめる。
しばらくスケジュール帳とにらめっこしていたツっくんだけど、私の視線に気付いてスケジュール帳を鞄になおした。


「今日は京子と一日中一緒にいるからね」
「予定は大丈夫なの?」
「うん、いつものクセでスケジュール帳見ちゃっただけ。俺バカだから、メモしてないと忘れるんだよね」
「ふふ、ツっくんは変わらないね」


私がそう言うとツっくんは「京子も変わらないよ」と言って頬を掻いた。
それから少し真剣な顔になって、おずおずと私の前に手を差し出してくれる。


「えと・・・・じゃあ京子、改めて・・・・行こうか」
「・・・・・・・・うん!」


私が思いっきり笑いかけてツっくんの手を取ると、ツっくんは少し頬を赤く染めてはにかんだ。










私の一番の宝物なんです。














企画サイト『ハルイチバン』に提出しました。


10年後の二人は結婚前提に付き合ってたらいいのにという妄想からの作品です。
結婚前提は脳内設定です。


お題に沿ってない気もしますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。






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