男泣き | ナノ




クジラの爆発


 薄ら汚れたつめたい便器を抱えて胃の底から震えるような力で吐く、吐くと、ありとあらゆる消化された消化途中の全て一切が混じり混ざってそこに落ちる。何やらおかしく笑えるので、俺もとうとう頭イかれたのかって悲しむべき事とは思ったけれどもいや、本当に何故か笑えるのが事実。口の中と鼻の奥辺りいっぱいに広がった酸っぱい不幸の味が懐かしくてドクンと波打つように心臓、胃の上の辺り、大きく跳ね上がるしそれはそれで痛いから別。はあはあはあと肩で息をし下を向いたままだった締りの悪い唇の端からは唾液が長く垂れて俺を汚した。

「カイジさん知ってる?鯨は死ぬと身体にガスが溜まって、膨張するんですよ」

 昔アカギが言っていた言葉を何故だか今に思い出した。狭っ苦しい公衆便所の個室で便器抱えて胃、からの暴力的な否定と悲しみにおいて今ここ、見上げた小さな窓のその更に小さな部分に見える夜と星と、思い浮かべた膨張するクジラの死体。








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