男泣き | ナノ




みんな死ね


 朝は鳥の鳴き声と温かな日差し、そして母親の私を呼ぶ優しい声で目覚めます。大きな欠伸と、眠たい目をこすり、ベッドから降りて顔を洗いに行くと洗面所には父親がいて、おはよう、と挨拶を交わします。父親が洗面所で歯を磨き終わると次に私が顔を洗い歯を磨いて、食卓に向かうと、温かいトーストとコーヒー、サラダとスクランブルエッグが用意されていて、私はいつもこの瞬間が、一日の中で一番好きで、午後には近所に住む友達と花を摘んで、遊びます。すれ違う大人たちは、にこやかに挨拶を交わし、よく晴れた空の下、私は幸せを心から感じるのでした、この日常から。そう思う、思いたい、思わせてほしい、だけどそんなのは全部嘘です。

 朝は父親が母親を怒鳴る声で目が覚めます。階段を下りると父親は私をみるなり酒を持ってこい、と言うし、従わないと気を失うまで殴られるので私は酒屋へと走るのですが、母親はただただ泣いて怯えて謝るだけで酒屋の店主は同情するフリして私たち一家の話を近所の住民と笑い話にして馬鹿にしているのを知っていました、薄暗い日の午後、近所の子供たちは花を摘んで動物たちと野を駆け回り笑い声を上げて楽しそうに遊んでいるのを横目に、今晩の酒代をろくでなしの父親と何も出来ない母親に代わって稼がなければならない私は重たい荷物をボロボロの手で毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日運んでいるのです。
 私は今でも父親と母親と、この村に住む人々が、心の底から憎いのです。殺してやりたいと何度も何度も思います。小屋の中にひっそりと仕舞い込んでいる斧を、思う時にだけ呼吸が出来るのです。

 ここからどこを見渡してもアナタはいないのですが思えば私の裏側にいます、時々苦しくなります。私はあの日から今でもずっと夜が好きで、真っ暗であればあるほど好きで、今にも爆発して死んでしまいそうな頼りない星に手を合わせて願うのは、いつも、アナタの事でした。
 もう一度会いたい。私は強くも幸せでも素直でも良い子でもなかった。アナタと同じ、同じ闇に生きてもいいように私は私と彼らを殺しています、頭の中で何度も、それは暗い所で息をしているあなたが気付くように。







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