詳細な経緯は省こう。 なんやかんやで私とリヴァイは一緒に壁外にいる。 そして森の付近で入るか入らないかと私が胸をときめかせている横で彼は躊躇いなく進んで行った。 もうちょっとこう、ロマンというか叙情というか、ときめきというか愛!そう、愛! 彼には愛があってもいいと思う。一体どうして私がこんな思考に至ったのかよくわからないけど。 少し進んだ先で彼は馬から降りていた。 しゃがみ込んで何をしているかと思えばその胸には少女が抱かれている。 連れてきた訳ではないから元々ここにいた、という事になるんだろう。 薄い胸が小さく上下している辺り、まだ生きているらしい。 リヴァイもそれを確認すると彼女の引きずるようにしながら私の所へ来た。 その少女を軽々と抱き上げると当然のように私に預けてきた。 突然増えた重みに馬が不満げに鼻を鳴らす。私も同じ気持ちだよ。 気を失っているらしい少女はこちらに寄りかかってくる。 ちょっと気を抜いたらバランスを崩して落ちてしまうだろうなぁ。 支えてやりながら改めて少女を見やる。 何というか、肌が白い。 あまり日に当たらなかったんだろうか。そんな白さ。 なだらかな真っ白の頬に色素の薄い長いまつげが影を落としてる。 まともに身動きしないので死んでるように見える。 遠慮なく胸に手をやれば上下しているし鼓動を打ってるのはわかるのだけど。 人間らしくないというか人形みたいだというかなんというか。 それ以前に、壁外の、森の付近でぶっ倒れているなんて。 私服で軽装のまだ幼い少女が一人で、だなんて。 まともな人間じゃないよなと思うのはそこからか。 思考が一段落した所で彼にも声をかける。 もうそろそろ帰ろうと。 陽が沈みはじめていた。視界が悪くなると帰りづらくなる。 この少女の事も気になるし早く帰った方がいいだろう。 運が良いのか悪いのか。 それでは帰りましょうかと話がまとまりかかっていた所で巨人が現れた。 15m級と、7m級くらいのが。 何も言わずにさっと動くリヴァイを尻目にもたれかかっている少女を支える。 可哀想に。あの子達はさっくりざっくり殺されてしまうんだ。 ううん、可哀想に…!ごめんね、何もしてあげられないね! 「…あの人、なにをやってるんですか」 小さな声だった。 それでも鈴が鳴るような、小鳥が鳴くようなそんな声だった。 私の胸の中で少女は目を覚ましていた。 長いまつげの下にはこれまた色素の薄い青い瞳があった。 大きな丸い瞳はしっかりと前を見据えている。 森を背景に飛び上がり血に濡れる彼を。 口を開いたもののすぐに言葉は出なかった。 さっきまで倒れていただけある青白い顔の少女が立った。 馬上でよく立てるな、なんて感心していると彼女は細い真っ白な腕を高々とあげる。 木の棒か何かを握っていることに気付く私を余所に彼女は訳のわからない単語を一つ呟いた。 何語だろうか。理解できない別の言語があるなんて。別の言語に関しては何かの歴史書で読んだ気がしないでもないが。それとも何か方言? なんて思考は大分的外れで彼女の握る細い木の棒の先から鮮やかな閃光が走り、それは巨人の首もとへと命中。 何の力によってかいまいちわからないものの切り裂かれた首もとから溢れる液体で辺りが真っ赤になり、少女も血塗れになりながらまたぶっ倒れた。 言わんこっちゃない。 倒すべき相手を失ったものの華麗に着地したリヴァイが近寄ってくる。 怪訝そうに眉を寄せて私になんやかんやと問いかけてきた。 が、私にも訳がわからないし彼が求めている答えは一つも出せない。 再び私の胸元に寄りかかった少女はもう何事もなかったかのようだ。 小さく胸を上下させる美しい少女を 気味が悪い、と |