ベルトルトを泣かせたい
「泣け」
「どうしたの急に」
困ったような表情をしたベルトルトが私を見下ろした。
その胸を殴りつけて再び泣けと言う。
彼はますます困ったように私を呼んだ。
「あんたね、気持ち悪い。なんでそんなへらへらできるの」
「一線おいてむっつりしちゃってさ。かっこいいと思ってるの」
「泣けってば。鼻水垂らしてすすって目を真っ赤にしてこすれ」
「馬鹿みたいに声あげて息つまらせてさ、咳きこんで見せろよ」
何があっても泣かないこの人は。
どうした泣くんだろうか。
私がいなくなっても泣かないだろうか。
いなくなったことにすら、気づいてくれないかな。
「ねぇ、ユリア泣かないで。悪い事をしたなら謝るよ。ごめんね、ほら泣きやんで」
それが私はとても寂しくてたまらないんだ。
「ライナーが羨ましい」
「うん」
「ゴリラのくせにいつもベルトルトと一緒」
「うん、彼も人間だからね」
「人間か」
「うん」
「ゴリラじゃないのかー」
「うん、違うよ」
泣かなくてもいつまでも彼と一緒に談笑していられるならそれでもいいかと思ったり思わなかったり。
どんな顔して泣くんだろうね、
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