エルヴィンさんが迫られただけ

「エルヴィンさん、貴方が好きです。私は貴方が好きです」
答えは既に決まってた。

彼女をそういう風に意識したことがないと言えば嘘になる。
先日何を思ったか上半身裸になった彼女を見てそういう欲が動かされなかったと言えば嘘になる。
ただ、その時に話した彼女を見てそういう目で見るのは間違っていると思った。
だから、という訳ではないけれど断った。
兵士である彼女に、仲間の死を乗り越えて戦おうとする彼女に、もういいからというのは違う気がした。

お礼と謝罪を伝えてやんわりと彼女の想いを拒否する。
眉を下げて目を細めて笑って見せる彼女がお礼と謝罪を伝えて受け入れてた。
これで良かったのだと真っ直ぐとした背中を見て思った。思い込んだ。

自分は一体どんな顔をしていたのだろうか。
リヴァイに気持ち悪い顔をしていると指摘されて気付いた。
先日の一件が自分の中では思ったよりも大きく重くなっているらしい。
別に間違ったなんて事はないはずなのに。後悔だけがどっと押し寄せる。

好きだと言えば良かったんだろうか。
もういいから、戦わなくていいから、止めてくれと言えば良かったんだろうか。

戦わなくてはいけないという彼女は、本当に死ぬまで、殺されるまで、食われるまで戦わなくてはいけないんだろうか。
誰かが死ぬたびに胸をえぐられるような気持ちを抱えながら、誰かが殺されるたびに悲鳴を上げて泣き叫びながら、自分自身が食われるその時まで戦い続けなくてはいけないんだろうか。
それは違うんじゃないかと思った。
とても馬鹿げた考えで笑ってくれて構わないのだけれど、彼女は私と出会う為にここまできたんじゃないだろうか。
私と結ばれる為にここまできたのではないだろうか、と。

そこまで思考が広がると溜息をついた。
この馬鹿げた考えは誰にも伝えない。口にしたりなんてしない。けど。
彼女が今の調査から帰ってきたら好きだと言おう。
あの恥ずかしい考えを口にするよりは何倍も楽だし簡単だから。きっと言おう。
どんな顔をするだろうか。笑ってくれるといいと思う。泣いたりしたらどうしよう。
早く帰ってくればいい、と思った。

「おはよう。今日は何だか楽しそうだね」
「良い夢を見てるのかな。私がいればいいんだけど」
「目が覚めたらどんな話だったか聞かせてほしい」
「無理強いはしないけど君の声が聞きたいんだユリア」

(もう二度と目覚めない眠り)
眠り姫が眠ってるだけだと誰が言ったんだ

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