先日、怪我をした。 いつの日だか冗談で言っていた剣の打ち合いをしたからだ。 周囲の者が懸命に止めるのを押し切って何故だか気持ちが昂ぶっていたのも手伝い、庭の方で紅炎と。 勿論力の差ははっきりしていたし、真面目なそれという訳でもなくお互いにふざけてお遊び程度のものだ。 だが、遊びといえど負けず嫌いという私の性格が原因で無理な体勢に持ち込んだと思ったら足を取られ転び、体を打ち付け、額を切るという痛ましい結果になった。 一番近い場所にいた紅炎が驚いたりなんだりというのは当然のことながら少し離れた場所にいた妹が大声で悲鳴をあげたのもまた覚えている。 ということがありながら私はその事を然程気にしていなかったりする。 なんなら以前柿をぶつけ紅炎の額を割るという行いが帰ってきたくらいにしか思っていなかった。 けれど、周りもそうとは限らない。 妹が不安げに心配してきたこともそうだし、下女の者が私を野蛮だと陰で言っているのも知っていた。 (あんなに力の差があるなんて) 当然と言えば当然のその事実にため息が出た。 私の背丈は筍のように伸びに伸びた。けれどそれ以上に紅炎達は大きくなった訳で。 段々と丸みを帯びる体と口をついて出てくる高い声。 私達はまだ大人と言う訳ではないし年齢的にも子供と言われる部類だろう。けれど、どんどん変わっていく。私は女だ。 「お兄様」 足を止めた彼は私を見て少々間を置いた後、薄気味悪いな等とふざけたことを言ってきた。 ははは、と馬鹿みたいに笑ってから随分と失礼なことを言うものだと彼に言う。 あまりがさつに振舞うのは止めよう、という私の小さな決意の表れだ。 別に男に産まれたかった訳じゃない。女で残念だと思ったこともない。 髪形はどうしよう、あちらの髪飾りの方が良かったかもしれない、あの服は素敵だと騒ぐことはとても好きだ。 「もう二度とそんな事言えないように素晴らしい出来の編み物をあげるわ紅炎」 ただ、元々が負けず嫌いなだけだというだけで。 |