きっとそれは必然だったんだろう。

私がこうして宮中をうろうろする事は決して褒められた事ではなく、私の評価は白龍の評価にも繋がるんだろうなぁ、と思いつつうろうろをしていた。
すると玉艶が現れてぺこりと頭を下げた私に近づいてきた。
顔をあげていいと告げる彼女は微笑んでいてとても不思議な感じがした。綺麗な人だという感想は多分間違ってる。

「久しぶりね…シャハラ、私、貴方とゆっくり話してみたいと思ってたの」
時間はあるかしら、という彼女の声に頷く。
私も彼女と、白龍の母親と話してみたいと思っていたのだ。

話そうと誘ってきたのは彼女だが特に私に何か話題をふることはなかった。
折角場所まで変えたというのに、その沈黙に耐えかねたのとふと思い出した事があり一度断ってから私は口を開いた。
以前、私の母の遺した首飾りを見た彼女の発言について問いを。
彼女は特に気にした素振りもなく、それに魔法がかかっているでしょう、とても強い魔法が、とだけ言った。
それは、きっとそうだろう。魔法界のものだし、魔法がかかっていても別におかしなことはないだろう。
だけど、どんな魔法がかかっているのか私にはわからない。教えてくれなかった。
誰から贈られてきたものかと問われて母親の形見だと答えた。どんな魔法がかかっているのわからないことも。

「開けないの」
いつの間にか握りしめていた首飾りがひどく、熱く、熱く、感じた。
開けてみたい、という私の声は大分情けなかった。
震える手を首飾りの中心に持っていく。すんなりと、それは開いた。

瞬間、眩い光に包まれた。

頭がくらくらとしてあほみたいに開いた口がふさがらない。
それは彼女も同じようで大きな丸い瞳をぱちぱちと瞬きさせていた。

きょろきょろと辺りを見回すが特に変わった様子はない。
一体何だったんだ。悪ふざけなら止めてほしい。ああ、きっと悪ふざけだったんだ。
死んだ後に一人娘に遺したものが悪ふざけグッズだなんて、いよいよ笑えてくる。
あはは、と謎の笑い声を発した私を前に玉艶は落ち着きを取り戻していた。ふぅ、とため息をついている。
首飾りの中身を改めてみると何もおかしなところはなく、ちょっとした知恵の輪のようになっていた。
彼女も私の手元の首飾りを覗き込んで何それ九連環?と謎の言葉で問いかけてきた。
曖昧に返答しつつあはは、と謎の笑い声を再び発する私に彼女の興味は失せたようだった。

そろそろ部屋に戻ろうかな、ときっとお互い考えていたんだろうけれどそれはとある一言で吹っ飛んだ。
「皇后様!こちらにいらしたのですね、白徳陛下がおさがしでしたよ!」