※無駄に設定が濃い
※現代パロディ


自分が勤めている社長の娘であるシャハラとの付き合いはそれなりに長い。

社長に頼まれて学校へのお迎えから始まり、何故か彼女に気に入られてしばらくこうして下校の付き合いをしている訳だ。
まあ、立場上気に入られて損はないし自分もそれなりに彼女のことをかわいいと思っている。
今のようにテストの結果で一喜一憂する姿は特に。

「全然、だめだったあ。でもね、お姉ちゃんが本貸してきて、面白くてつい読んじゃったの。勉強してもわかんないのに、勉強しないで挑んじゃった」
あーぁ、と不満そうに声をあげた彼女は車の後ろの座席でぼすりと寝転がった。
それから小さくどうしようと呟いていた。

「お姉ちゃん、頭よくって、同じ高校行きたいなって頑張ったの。いとこの白龍とか紅玉もいるしね。受からないって言われたけど頑張って頑張って入ったの」
でも、と続ける彼女の声はそこまで悲壮を感じさせはしなかった。

「やっぱり、無理だなあ。ついていけないもん。難しいよ。誰がいつどこで死んで何がどの法律なの?ナンシーが一ヶ月フランスに留学して何を学んだっていうの?」
つい、苦笑してしまう。
別に自分は学生時代成績は悪くない、というよりは常に上位をキープしていたが思考は同じだ。
生き物の神経から分泌される何かがどこの器官に反応して何が起こるか、なんて必死に覚えたがくだらないと思ってた。
今思い返してもくだらない、と思う。
一応一流と言う会社に勤めてはいるが体内で分泌された何がどうなんて意識したことはない。
コンビニでアルバイトしている人だってきっと同じだろうと思う。

「将来、どうしよう。進学したくないなあ。でも、就職難しいよねえ」
「お姉様と同じくこの会社に入ればよいのでは?」
うーん、と彼女が声をあげる。
何を渋っているのかわからないが彼女の姉は今自分の同僚であり、若い。
と言うのは彼女が大学?四年もやってられっか、と短大卒でこねで入社したからだ。
力はあるし別に文句もない。むしろ賢いやり方だと思う。

「でも、流石に高卒はなあ。それに、うちの会社、なんだか忙しそうだしつまんなそうだもん。専門学校行こうかなー」
後ろでううんと彼女がうなり、ごろりと転がったのがわかった。

「デザイナーとかホテルマン、搭乗員も素敵。あ、後はブライダル!すごくいいと思うの!楽しそう!」
楽しげに声をあげる彼女がむくりと起き上がって運転席に顔を寄せた。
声が、近くなる。

「そしたら、一人暮らししようかなあ。学校に近いところ。ね、今みたいに迎えにきてくれる?」
「近いところに住むならお迎えは必要ないのでは?」
「んー?なんか、黄文、冷たいよ。私離れちゃうって言ってるのに」
「はあ…冷たいですか?そうですか?」
「そうだよ!冷たい!ひんやりしてる!」
「それはまあ…不快にさせたのなら申し訳ない、と」
「だからあ、もう、私、結婚できるんだよ!」
「結婚するんですか?」
「する!黄文と!あのね、早く私を法律で貴方に縛り付けてよ!」
彼女は一体何を言ってるんだろうか、とハンドルを握る手が汗ばんだ。

真っすぐなプロポーズ