※妄想
※捏造
※戦うお姫様!

一の姫確かに気が強く国を憂う気持ちも人一倍であった。
だから嫁ぐという話に決していい顔はしなかった。
離れたくないというのが素直な感想だったんだろう。
とは言ってもここで誰が我儘を言ってももう決まってしまったことだ。
覆らないだろうしそれで彼女も納得がいってたはずだ。った。

三日後には煌を離れる。お別れの宴でもさぁどうだというその時期に。
彼女は怪我を負って帰ってきた。乱れた衣服や髪を気にせずに廊下を駆け回っている。
一体何が起きているのかと絶句して棒立ちとなっている自分に彼女は近寄ってきた。

「兄上!どうですか、迷宮を攻略しました!武人として煌に置いてくださいまし!」
少しばかり遅れて浮かんだ絨毯の上に乗った神官が近寄る。
すまなさそうな表情をした彼が言い訳がましくだってよ、と口を開く。

「攻略すると思わなかったんだって。死ぬだろ普通はよぉ。いや、そしたらお前誘おうと思ってたんだけど」
随分と物騒な内容を軽々しく口にする神官を相手に一の姫がきっと彼を睨み口をとがらせた。
それからしばらく彼らは幼稚な言いあいをしていてその場に拘束されるはめになった。

彼女は迷宮という危険な場所に行ってまで煌を離れたくなかったんだろう。
嫁ぎになんて行きたくなかったんだろう。

元々、だ。
彼女の嫁ぎ先はいつ反乱を起こすかわからないという気を許せる場所ではなかった。
そしてそれを統治する時間や兵力が今の煌にはなくて。
そんな状況下に好きにできる力を持った彼女がいる事がどんなに心強いか。

「あーあー!残念でしたねぇ!この通り私は生きてますものねぇ!貴方の読みがいつもあたるとは限らないのですよ!」
「うるせぇな!そんな事言ってねぇだろぶす!馬鹿かお前!ばーか!ばーか!」

しばらく終わりそうにない言いあいに終止符を打つために二人の間に入って自分より幾分か小さいその肩を抱いた。
戸惑い宙に浮いたままのその手は思っていたよりもずっと小さくて傷だらけだった。

「おかえりシャハラ」
ただいま、と泣きそうな顔で彼女が笑った。


さて、あそこの統治にはどの程度の時間がかかるだろうか。