息が、つまる。
隣の壁に突き刺さる銀色の刃に視界が鈍る。
口を開いても言葉どころか声すら出ずに鈍った視界の中でゆらりと彼女が揺れた。

眉を下げて困ったような表情の彼女がごめんね、なんて謝る。
ごめんね、ごめんね、怖かったよね、そんなつもりじゃなかったの

段々とはっきりしていく視界の中で彼女の小さな白い手は剣の柄をしっかりと握りしめていた。
痛いの嫌だよね、怖がらせるつもりなんてなかったの、本当にごめんね

ふにゃりと口角を歪ませる彼女は途切れることなく謝罪を口にする。
傷付けるつもりもないんだよ、ごめんなさい、怒っちゃ嫌だよ、嫌ったりしないで

止まることのない謝罪の言葉に一瞬背筋が震える。
そんな俺を見て彼女がいつもの調子でくすりと笑う。
自分より非力な少女を相手にここまで怯えて怖がっている自分がおかしいのではとさえ思えてきた。
彼女が唐突に何の脈絡もなく挨拶をするかのように笑顔でこちらに刃を向けてきたのだとしても。

彼女が小さな手で頑張って深く刺さった刃を壁から抜くのを見て安堵の息をつく。
俺を見て嬉しそうに笑みを作る彼女を相手に今のは何でもなかったのだと自分に言い聞かせた。

「ねぇ、アリババくん」

次はちゃんと殺してあげるから

(綺麗に殺した彼を美しく飾りつけてずっと一緒にいたいのです)