まずはとても不愉快だと感じた。
時折相手が女みたいな声をもらすけれどもそれがまた余計に不愉快にさせる。
そもそも男の行為中をを見る趣味なぞない訳でましてこれはもう自分の中ではくだらない自慰に属するのだ。
これで相手がもっとごつごつした筋肉のついた体であったらそれはもうさぞ気持ち悪かったことだろう。
別に今だって気持ちが良いわけでもないが。

情事をと誘ってきたのは勿論向こうだ。
いつもの調子でなんてことはないように笑顔で。
普段からからかうようなそれでいてどうも危険な気しかしないそれを自分はよく思っていなかった。
だから止めさせようというのを一番に付き合うと答えた。それ以外の理由はない。本当に全くない。
自分の中では彼は驚いて冗談だと言う筈だったのに。
それはそれは嬉しそうに喜び俺の手を取って自分の部屋へと向かい始めたのだ。
多少の好奇心がなかった訳でもないがまさか自分の身を使うなんて真っ平ごめんだ。そういう趣向はないし。
同性が性行為をというのを聞いたことがない訳ではないが聞くだけでも信じられない。
排泄する部位である穴にこれまた排泄する部位を突っ込むなんて。
なんだか汚い気もするし恐ろしい気もする。
未知の部位に未知の行為。
嫌だ。

それでもなんやかんやと準備をしはじめる相手にあれは嘘だったとは中々言い出せなかった。
先日のように痛め付けられるのももうご勘弁願いたい。
どうにか彼の気が変わらないだろうかと俺が心の中で必死に願っているのにも関わらず彼は言う。
しばらく誰も自分の部屋に近寄らせるな、と使用人に。
どうにもならない。
腹をくくるしかないのか。
それにしたって肛門に一物を?
入るのを前提に性行為は行われるのであろうがちょっと待て。
入るのか?

体が不調な際に排泄物が固くなったりでかくなったりしたそんなのを出すだけで痛いのに。
大体ものを受け入れるようにはできてないはずだ。
それに受け入れるようにできてる筈の女の性器だって最初は痛がってるじゃないか。

考えれば考えるほど無理だと思ったし嫌だった。
もし仮にそんな事をしたとしたら、お天道様や自分の主にもう二度と顔を合わせられない気がする。
どういう顔で生きていけばいいんだろうか。どうしよう。

それでもとうとう言い出せず相手の口付けに答えてやり寝台に押し倒された。

相手の慣れたような手付きに今までこんな事をしていたのか、という恐れにも似た何か。
それと軽蔑と嫌悪、ついでに好奇と侮蔑、嘲笑。
自分の性器に触れられてそれを扱われて悪い気分でもなかったがいい気分でもなかった。
どうも壁を一枚隔てた向こうでの行為な気がして気分が乗らない。
身が入らないというかこうして思考にふけるぐらいに集中できていない。
もう自分は年寄りに入る年齢でそういう気があまり起らないのも一つの理由かもしれないが。
それにしたって若い女、それもとびきり美人の女みたいな相手にされてる分には、視覚的には満足だ。

「…ん」
細い指がこちらの肛門に回って入り口を気味が悪いくらいに撫でてからゆっくりと入ってくる。
思わず出た自分の声が少し恥ずかしいのは人様に聞かせるような声ではなかったから。
と言っても決して快楽だとかそういうのではなくて苦しいというのが近いのだろうか。
排泄物を出すときに力む声が近いだろう。
やっぱり人様に聞かせるような声ではない。

「気持ちいい?」
「便所行きたくなる」
彼は多少不満そうなものの仕方ないと思ったのかどうか。
それ以上は何も言わずに何が楽しいのかこちらの尻の肉を揉み、揉み揉み、存分に揉んでからまた肛門に指を入れる。」
自分よりずっと年下のまだ少年である相手に組み敷かれて肛門をいじられる。
何だか間抜けだなあ、と思った。

自分が何もしないのはどうだろうと思ったのは肛門に指が数本入るようなってから。
相変わらず快楽なんかは感じず排泄の欲求を無理矢理引き出されてるような感じで気持ちよくはなかった。
とりあえず相手に自分の胸の内を伝え渋る相手を押し倒した。
なんとなく手で触れるのは嫌で淫売の女がするように口に相手の性器を含む。
すぐにやっぱり手でやれば良かったと思ったが相手の反応を見て別にいいかと。
びくりと白い体を震わせたかと思えば顔を真っ赤にしてやだぁとやけに間延びした声を出す相手が可愛らしいと思ったからだ。
男の性器をくわえるだなんてそんなことは勿論はじめてで何をどうすればいいかはわからないものの、変な話ではあるがどこをどうすれば気持ちいいのかというのは同性故にわかりきっているのだ。
ぐりぐりと舌先で先端部を押さえつけるたびに女みたいな声を出すのが面白かった。

白い肌が薄く色付いてびくびくと跳ねる度に声をあげる姿にどうも自分は興奮しているらしい。
さっきまであんなに集中できなくて気持ち悪いとさえ思っていたのに。
ああ、だめ、だめ、無理、だなんて切羽づまった声をあげる相手の小さな手が俺の肩を掴む。
別に自分だって日に焼けてる方ではないが相手は病的に、女みたいに白かった。
どうしようか。自分は変態らしい。
相手は男だと言うのに。
いやいや、まさか。一時の感情だ。
それでももう汚れなき純粋な自分の主には顔を向けるのが申し訳ないが。
声を震わせた相手は息を詰まらせてぎゅっと口を結んだけれど桃色の大きな瞳はこちらを向いていた。
びくりびくりと口の中に吐き出された液体を飲み込む気はさらさらなくてその辺に出した。
独特な風味というか触感というのか、そんなのが残ってた気分が悪いのでその上に唾も吐き出す。
が、完全には取れないので気分が悪いのはしばらく続きそうだ。
相手はというとぐったりと寝台の上で恥ずかしげもなく裸体を晒している。
白い細い四肢はまだ子供だと感じさせるがやはり肉のつきかたが男だと思った。
これで相手も満足だろうし自分も一段落ついたなと納得する。
別に自分が疲れる要素はなかったが口の中も気持ち悪いしさっさと部屋に帰ろうと立ち上がるが制止の声がかかる。
声をかけるだなんて部屋には自分以外に一人しかいないんだから決まってる。
ほんのり色づいた顔の潤んだ瞳はこちらを見上げて切なそうなそんな顔をしていた。
いれてくれないの、と赤い唇が動く。
娼婦顔負けの誘い方だと思った。
娼婦なんて相手にしたことないから知らないが。

「おじさんって童貞じゃないの」
「そんな訳あるか」
「でも経験多くないでしょ」
「多いのがいい訳じゃないだろ」
俺がそこまで言うと紅覇は小さな体をこちらに預け、首に手をまわして寄りかかる。
それからそうだね、お前はいい子だね誠実だねと。
相手から比べれば誰だって誠実の類いに入るだろう。
それに好きでもなんでもない年下の同性のそれも皇子と卑猥なことをしている時点で誠実もくそもない。

「いいな、ずるいな」
ぎゅっとしがみついてきた相手が不意にそう言った。
何がとは聞けずに目の前にあったなだらかな肩を噛んでやればひゃん、なんて声があがった。

「俺のが入るように思えないんだが」
「大丈夫だよ、いれてよ。ぐちゃぐちゃにひっかきまわして」
「指とか入れるのは汚いだろうから嫌です」
「いいってば。そのまま突っ込んで」
はやく、とねだられて寝転がる相手に覆い被さる。
そのまま折れそうなくらい細い足をつかんで開かせる。
股間には自分と同じ形の性器と肛門。
改めて考えれば興奮するような部位は何もないのだがそれにしたって自分の性器が反応をするのは相手が可愛らしいからだろう。
女みたいだから。

「んぅ、っあ、あ、あ」
女じゃないけど。

先端部を強引に突っ込んだ辺りで相手は悲鳴みたいな声をあげる。
勿論快楽なんかからではなくて苦痛からだろう。
突っ込んだこっちも痛いくらいだから多分間違いない。
俺に回した手がぎゅっと肩を握りつぶすよう掴んでくる。
しまいには泣き出して痛い痛いと悲鳴をあげた。
彼の泣き顔を見れる奴って少ないんじゃないだろうかとそう思った。
ちょっと優越感。
しかし痛い。

「力抜けって」
「っむり、いたい、むり」
しくしくと泣きじゃくる相手がほんとにほんとに幼い子供のようでなんでもしてやりたくなる。
けれど相手が望んだ行為を俺はしている訳だからこれ以上はどうしようもない
と思いたい。

本来なら抜いて止めてやればいいのかもしれないが残念ながらこちらは快楽を感じていて手放したくはない。
なんでもしてやりたいと思うのは自分の快楽の二の次である訳だ。
相手の薄い胸へと唇を寄せて先端に吸い付くと女みたいな反応をする。
もしかしたら性器が変なだけでこいつは女じゃないだろうか。
そんな風に感じながらちゅうちゅうと吸い付く。
舌でそれを押し潰して噛みついて舐める。
喘ぐ声がうるさい。
自分はこんな相手に興奮しているのだから変態だろう。
だがそれ以上に相手は変態だ。
何が気持ちいいんだろうと思いながらやわらかな尻の肉を掴んで自分の性器を狭い中に入れていく。
そういえばろくな教育を受けていないから曖昧だが肛門は排泄する部位で体内の中では何だっただろうか。
食べ物を消化する管だっただろうか。
腸なら経緯は忘れたが見た事がある。
何とも言えない色をしていてずるずるべちゃべちゃぐちょぐちょと言った具合のものだった。
勿論見ていて気持ちいいものではなかった。
それに今自分の性器を突っ込んでるのか。
普通なら萎えるであろう思考に自分は興奮を、性的な興奮を覚えているのだからどうしようもない。
相手の体内に自分のものが入っている。
体内の臓器に。
自分の性器が。

ぞくぞくとした感覚が背筋を走り、妙な気持ちで胸が満たされる。
この中に、射精するのはどんな気分だろうか。
どろどろとした液体が管の中を逆流する。
体内の中を自分の吐き出した液体が流れるんだ。
どんな気分になるだろうか。

発情した獣みたいな自分とはうってかわって紅覇はこちらにしがみつきまだ痛い痛いと喚く。
それも俺が相手の性器を掴むまでだが。
何だか頭は上手く回らなくて気遣う余裕もなく乱暴に相手の性器を掴んで上下に扱く。
最初は戸惑うような声で泣きながら首を横に振ってたが固くなりはじめたのがわかる時にはもう喘いでた。
尻の方がぎちぎちと締め上げてきて痛い。
痛いのだが気持ちいい。
別に被虐加虐といった精神はないが元より自分はこういうのが好きなんだ。
背徳や罪悪を感じる嫌悪すべき行為が。

相手が性器の抜き差しに喘ぐようになった頃に果てた。
一連の行為の中であっちが三回ほど精液ぶちまけてこっちが一回。
若いというのは羨ましいものだがよく吐き出すものがあるよなと感心した。

ぐったりとした相手が眠りについたのを確認してから後始末をして湯浴みをして自分の部屋で寝た。