そう言えば考えてみれば彼女はこちらに何か要望を訴える事がない、と思う。
…というのも行為に及ぶ際の拒否を数に入れないでだが。
未だに時折体調不良だなんだと適当な理由をつけられて断られる。
とても生意気で可愛げがなくて最悪だと思うのだけれど色事に関して人は盲目になるだなんて誰がそんな上手い事を、
…というのは本題ではないし、決して俺が彼女に惚れてるだなんだという話ではない。

シャハラにしばらく自分が煌を離れる旨を伝えてついでに何か土産を買ってきてやるから何がいいかと問う。
彼女は視線を下にやって考える素振りを見せてしばらく、黙る。しばらく。
随分長い間黙っていたと思えば顔をあげて俺を見ていりませんと一言で返事をした。
散々考えていらないというのはどういう事だろうか。遠慮か。
謙虚に慎ましくと考えての私に構わなくていいからという遠慮か。
それにしては今お前が考えている間に時間という貴重なものをくれてやった訳だが。

これがもし俺ではなくて彼女の家族や従者だったならば。
有名な菓子が欲しいだとか着物が欲しいと強請ったんだろうか。
俺だから言わないのか。それは不愉快だ。何が不愉快かよくわからないが不愉快だ。

「お前は、」
(寂しくないのか)
彼女に何か問いかけようとして何を問いかけようとしているのかわからなくなり黙った。
そんな様子が不安にさせたのか彼女は一瞬躊躇った後に口を開いた。

「1つ、我儘を言っても構いませんか」
彼女に続けるように促しながらふと自分の気分が落ち込んでいるのに気づく。
いや、落ち込んでいる訳ではなくて、腹立たしいというか、何というか。
以前もあったような気がする。
こうして慌てて彼女が俺の機嫌を取るように口を開くが随分と的外れで。
その時は大して気にならなかったのにどうして今はこんなに、

「早く帰ってきて、私の傍にいてほしいんです」
言い終えると俺からの反応がないからか彼女は俯いた。
ごめんなさいと小さく虫の鳴くような声で謝罪をする。
頭の中央部を俺に向けたまま黙って動かない。何だ叩かれたいかその頭。
シャハラの頬につまむように触れて引っ張るとようやく顔をあげた。
顔を赤くして照れたような表情をしていた。

「…行ってくる」
彼女の頬を放してやり頭を撫でてから額に口づけた。
行ってらっしゃい、と微笑みながら言う姿に先程まで自分が何を考えていたかなんて忘れた。


らぶらぶさせたかったけどできなかったの図