「シャハラ」 名前をつけた。 しばらくは反応しなかったが名前を呼びながら頭を撫でてやったり抱きしめてあげたりすると反応しはじめた。 ついでに名前を呼んでご飯をあげることにしたら何か嬉しい事が起きると理解したのか表情を明るくする。 それから人と同じような体の構成で牙がある以外口にも変わりは見つけられなかった。 それなのに彼女は人と同じくは喋られないらしい。 何か伝えたくても獣みたいな声をあげるしかないらしい。 上手く伝わらないに決まってるそれが理解されないとわかると八つ当たりをする。 困ったなぁ。 だけど、利口なのかこちらが言っていることは理解できるらしい。 言いつけを守れるかどうかまでは別として。 後、人よりは力が強い。 大人の男の人数人ぐらいなら抱えて投げ飛ばせるだろう。 だけど、力が強いだけだ。 刃を立てれば呆気なくきれるだろう。 名前を呼んでふわふわとした毛を撫でてやると嬉しそうに目を細める。 小さな手がぎゅっと僕の衣服をつかんで甘えるようにすり寄ってきた。 そういえば、この子の家族はどうなったんだろうか。 「ねぇ、シャハラの家族はどうなったの?」 じっと相手を見つめる。 シャハラははっとして顔をあげると僕を見て悲しげな顔をした。 そして口をぱくぱくと動かすも言葉なんてものは出てこない。 ぎゅっと僕の衣服を強く強く掴む。 小さく鳴き声をあげるとそれっきり黙った。 珍しいもんな。人狼だなんて。 大方どっかに捕まったかな。 もう二度と会えないんだろうな。可哀想に。 死んでるかもね。もうあの世かもしれない。 また名前を呼んで頭を撫でてやると今度は嬉しそうに笑ってた。 可愛く人間みたいに表情を変えるけれど、本当に人体は人間と同じ構造なんだろうか。 その小さな赤い口の中とか、四つもある耳だとか。 そうだ、最初から気になってたじゃないか。 何をためらってたんだろう。もうこの子は僕の物なのに。 耳を引っ掻いてやるとびくりと反応して僕を見上げて不思議そうに不安そうに瞳を揺らした。 見たことのない珍しい瞳の色だ。どうなってるんだろうか。 彼女の、人間の耳の方を引っ張る。 不思議そうな顔は変わらない。 暴れては面倒だと床に倒して抑えつけた。 いくら耳を引っ張ってもその顔は苦痛を感じさせない。 痛覚もないのか。つまらないな。 きりおとしたらどうなるんだろう。 やっと、悲鳴をあげた。 ぼたぼたと赤い血がこぼれる。 そうか、やっぱり血は赤いのか。 鉄っぽい臭いも人間のそれと同じだ。 耳があった辺りに手をやってぼろぼろと涙をこぼして叫ぶ。 切り落とされたら流石に痛いのかな。これは可哀想な事をした。 ところで人よりも長い爪のある手が気になる。 だってあの小さな小さな手で何倍もある人を投げ飛ばせるんだよ。 それで壁を打ち砕いて鉄を折り曲げられるんだよ。 一体どうなってるか気になって仕方なくなってきた。 流石に両方は可哀想だと右手を彼女の耳元から引き離して掴む。 みしみしと骨がなる音がして恐怖に滲んだ瞳が揺れる。 小さな音がして骨が折れる。絶叫に耳が痛くなった。 胸を上下させて必死に息をしている姿は少し可愛い。 流石に素手でこの手を切り落とすのは難しいかな。 何か刃物を持ってこよう。その間に逃げられては面倒だ。 彼女の上から一旦どけるも小さな足の上に乗っかって足が折れたのを確認した。 それから一度彼女を置いて刃物を取りに行った。 刃物を持って戻ってくると彼女はうずくまって震えていた。 僕が名前を呼ぶとびくりと反応して泣きじゃくりながらこちらを見た。 獣みたいに声をあげる。何かを伝えたいんだろうか。 それが一度でも伝わった事があるだろうか。 なんて理解力の低い馬鹿なんだろう。 でも、可愛い。 よしよしと頭を撫でてやるたびに彼女は肩を震わせた。 ぱくぱくと口が動く。必死に息をして何か言葉を作ろうとしていた。 うん、可愛い。 ところで骨を折ったら相当痛いと聞く。 何をしても、しなくてもずきずきと痛む。 眠ることもままならないし動物なら死んでしまうって。 それは可哀想だ。今も僕が戻ってくるまで痛くて痛くて仕方なかったんだろう。 足はどうする気もなかったが切り落としてあげよう。 悲鳴があがる。長い爪が僕の皮膚に食い込む。 皮膚を切り裂いて肉を削ぐように爪を立てられた。 彼女の足を切り落とすのは、骨で一旦刃が止まってしまった。 だけど力を入れれば細い骨だからだろうか。すぐに切れた。 邪魔なのでそこら辺に蹴り飛ばして僕に爪を立てていた左手をどける。 悪い手だと思って叩くと悲鳴を上げる。 今度は右手だと思っていたがあまりにもおびえた目でこちらを見るのでその大きな瞳が気になってきた。 赤く赤く汚れてしまったけれどやっぱり綺麗だと思った。 珍しい色だ。初めて見たかもしれない。 立ち上がって陽に照らすときらきらとして見えた。眩しい。 顔を押えて泣きじゃくるシャハラがちょっとやかましい。 こういう時くらい静かにしてくれないかな。馬鹿だな。 そろそろ忘れていた右手だ、と思っていたがこの手にある綺麗な瞳にすっかり興味は奪われてしまった。 もういいか。 瞳が汚れないよう傷つかないようへばりついていた肉片を払ってから置いた。 ちゃんとやわらかい布の上にそっと。 ぱくぱくと彼女が口を動かす。 何を言ってるかはわからない。 むしろ何も言ってないのかな。 ふわふわとした長い髪を掴む。白いうなじがあらわれてやっぱり震えていた。 もう彼女は何も言わない。黙って震えていた。 抵抗もしない。させなかったのもあるけど。 彼女の首をはねるとやっぱり僕らと同じ血が流れてきた。 赤い血が溢れる。止まらない。 あ、服が汚れちゃうな。まぁ、いいかな。たまにはね。 楽しかったしね。 (やっぱり半分人間だからなのかなぁ) (残念、あんまり面白くなかったな) |