※現パロ

「私の携帯、壊れたんですよ」
そう言う彼女の手には薄い端末が握られていてせっせとせわしなく指が動いている。
誰の何が壊れたって?

「…へぇ」
「あ、大したことないって思ってるでしょう。結構、落ち込んでるんですよ。データが飛んでしまって」
「バックアップしなかったおまえが悪い」

そうなんですけど、と珍しく非を認める彼女は確かに落ち込んでいるようだ。
今握られている端末は代替機か新しく買ったものなのだろう。

「…大した情報も入ってないだろ。なに落ち込んでんだ」
あまりにもしょんぼりとしている彼女にそういえば彼女はううん、と首を捻る。

「うん、大したことないんですよね。自分のうまく撮れたどこにあげるでもない自撮り写真が消えたのは惜しいのですが」
世界一くだらないものだとせせら笑うと彼女もはははと笑った。

「本当に、本当に大したことないんですけど。貴方とのメッセージのやりとりが消えてしまったのも少し、惜しいかなと」
随分可愛らしいことを言うものだと思ったがそもそもやりとりの数すら少ない上に最近のやりとりといえば「そういえばお前ってイカの目玉食える?」みたいなものだった気がする。
世界一、いや、世界で二番目にくだらない、意味のないやりとりだ。どうでもいいと笑ったが、彼女は笑わなかった。

「からあげみたいな犬の写真を送ったらおにぎりみたいな猫の写真をくれたでしょう」
ああ、そんなやりとりもあったかな、なんて思っていると彼女は微妙な顔をして、ああいうやりとりが消えてしまったのが惜しい、と。
本当に本当にくだらないのだが、再び彼女宛に同じ画像を送りつけた。ふふ、と小さな笑い声の後、見覚えのある画像が送られてくる。
全くもって無意味なやりとりだが世界に一人くらい無意味なやりとりをする相手がいてもいいかもしれない、と思った。

[突然ですが][何だ][私は貴方がとても好きです][デレ期か][デレ期到来!][しかし一瞬の出来事であった!!][カレー何口?][中辛]