自分の過去をタマネギをむくかのように一つ一つ思い出していくと死にたくなる。
生まれてこなければよかったのに。生きてる意味がわからない。死んでしまえ。死んでしまえ。

というようなことをついぽろっと言ってしまうと珍しく彼は手を止めて私をみた。
彼の手には傀儡の足が握られているがまぁいい。手を止めて私の方に視線をやること自体珍しいんだから。

彼が何をいうかと思えば俺はな、と語り始める。
好きだ、というからついその言葉に反応してしまったが続いたのは俺のことがな、という自分大好き宣言だった。意味がわからない。

「自分のことくらい好いておけよ」
そういうと彼は再び作業に戻り始めた。意味が分からない。
自分のどこが好きなのかという私の問いに彼は悩むことなく顔、と答えた。
確かに美しい顔だ死ね。
非の打ちどころのない彼の恐ろしく整った顔を殴りつけたくなった。ばきばきに壊れて崩れてしまえばいいのに。

「この美貌、その上天才ときた。もう、最高だろ」
ほざけ。

「で、お前は自分のなにが嫌だって?」
この会話に嫌気がさしてきていたのは内緒だが彼の問いにとりあえず、考えてみた。
早く死んでしまえばいい。消えてしまえばいい。苦しんで苦しんで呻いて足掻いて死ねばいい。
自分にそんな風にすら思うのだからわざわざ嫌いなところなんて考えるまでもない気がする。

「顔、」
白い肌に色素の薄い髪。髪色と同じ長いまつげとその中に収まる硝子のような瞳。筋の通った小さな鼻と薄く色付く唇。

「は、好き」
こんなに美しい人は他にいないだろう、と笑った。
サソリさんは苦い顔をしてほざけ、とのたまっている。

「ふふふ、ふふ」
気味が悪いと言う彼にいつまでも笑った。

早く死んでしまえばいい。苦しめ。呻け。
だけど死ぬその時までは醜く生き抜いてろ。

「(貴方がいる限りは、)」
死ぬのも惜しい気がしないでもない。