暁でのご飯は基本各自で、だ。
まぁ、犯罪者が慣れ合って和気藹々と食事をするのは流石に変だろう。

ただ、気が向いたり、時間が合えば一緒に食事をすることはある。
それから、一部何かに熱中しがちな人は食事を忘れやすかったりする。
それはいけないと思わないでもないので食事を余分に作り冷蔵庫に入れておいたりする。
気遣いというよりは料理が好きなので趣味の一環と言えなくもない。
感謝の言葉がほしいわけでもないし…というのはさておき、さぁ、何を作ろうか。

まだ何を作るかも決めてないのに卵を割った。
卵をとこうと箸を握る私に近付いてきたのは小南で、名前を呼ばれたので動きを止める。
彼女は器に入っている割られた卵を見てから私へと視線をずらした。

「…私が小さい頃は、好き嫌いなんて我が儘を言う余裕なんてなかった。そんな贅沢は言ってられなかった」
そう語る彼女に普段から自分の好き嫌いを高らかに訴える人達数名を思い出し、あれはいけないよなぁ、と思った。
野菜全般嫌いだなんて言ってるあいつはきっと食わず嫌いだし、味付けに文句を言う最年少の彼は一体何様なのだろうか。犯罪者様か。
彼女ほどではないかも知れないが、やっぱり恵まれた環境にいるからこその言ってはいけないことがあるだろうと思った。

「だから、言ってはいけないことだと解ってるけどどうしても言わせてほしい。その卵のにゅるにゅるした白いのを、どうか、とってほしい」
あ、これが本題か。あのね、小南、これはからざっていうんだよ。
心の中でそう告げながらからざをとって三角コーナーに捨てておいた。

今日はオムライスにしよう。
ケチャップはたくさんあった筈だから。

「…レナ」
まだ何か用があるのかと彼女を見れば、彼女は笑っていた。
まぁ、なんて美人ですこと。

「いつも、美味しい食事をありがとう」

ああ!なんてことだろう。
ハートを撃ち抜かれてしまった!