気が付いたら私は一人ぼっちで声の出し方も忘れそうな、そんな時だった。
彼に出会ったのは。

彼はとても優しかった。
私の名前を呼んで私の頭を撫でてくれた。
くだらない話をした。難しい話もした。
本の話をした。天気の話をする。彼が咳き込んだ。血を吐く。呻いた。叫ぶ。

「大蛇丸様は死んでしまうの?」
しばらく彼の姿を見なかった。
カブトがてけてけと歩いているのを見つけて捕まえてそう聞けば彼は呆れたように笑う。
そんなことは決してないから安心していいよ、と。
どうしてこの人がこんな風に言い切れるのかがわからなかった。
何かすることがあるかと聞けば何もないから好きにしてなよ、と。

カブトは優しい人だけど、嫌いじゃないけど、好きじゃない。
好きな人は、この世界でただ一人で、私の世界は彼一人で成り立ってる気が、する。

「(何の話をしよう)」
話したいことがたくさんありすぎて言葉にならない気がする。
一個一個整理してたらいくら時間があっても足りない。
次、彼にあったらまずはじめに何の話をしようかと考えた。

「大蛇丸様は死んでしまうの?」
ご飯の話をした後、ふと彼にそんなことを聞いた。
髪色が変わって短くなった。時々彼は外見が変わるけどそんなことは大したことではなくて。
私の問いを聞くと彼は呆れたように笑う。
そんなことは決してないから安心してなさい、と。
カブトと同じことを言ってるということには気づけたが、どうしてかとても安心した。
彼の声が、言葉が、私を安心させるに違いない。そうやって納得して、笑った。

彼がいなくなったらどうするんだろう。
彼がいなくなったらどうなるんだろう。

―――――――

「大蛇丸様と、同じ匂いがする」
そう言いながらサスケの服を掴むと彼は鬱陶しそうに私の手を振り払った。

「ねぇ、ついていってもいい?」
にこりとも笑わない彼は私に邪魔をしないなら、と言った。
サスケのことはあまり好きになれそうにないなぁ、なんて思いながら彼の後ろを歩く。


ねぇ、お嬢さん、誰でも良かったなんてことはないのかい!
(そんなことないよ、)