※毒だよ!

頭が痛かった。
ので、早くに布団の中に入っていった。

そして夜中に目が覚めて喉が渇いたことを感じて起きあがった。
ふらつくのをわかっていながらも水を飲み、再び布団に戻ろうと歩いていると、倒れた。
頭痛が酷い。手足のしびれを感じる。声が喉に張り付く。

「…布団で寝ろ」
サソリさんの声が聞こえた。
首だけ動かすと彼は怪訝そうに私を見ている。
睡眠を必要としていない彼は元々寝てなかったんだろうか。
きっとそうだ。ヒルコでもいじってたんだろう。このやろう。

「具合が、悪いです」
寒気を感じて肩を抱く。

今日、虫が体内に入ってきた。
卵も死体も全て体外に出した。
出したは、出した、が、

「毒のある虫だったんだろうな」
私の勘はあってたらしい。
毒のせいだと理由を理解すると息をついた。
理由がわかると少しばかり安心する。

「解毒薬、作ってくれます、か」
私の頼みを彼はしばらく間をおいてから頷いてくれた。
後は、解毒薬ができるのを布団の中で待ってればいい。のだけれど、体が動かなかった。
それほどにまで私の体は毒にやられてるらしい。

「サソリさん」
「なんだ」
「私を布団の中に運んでください」
「歩け」
なんとなく予想していた返答にため息をつきごろりと寝返りを打つ。
こうなったらここで寝てやろう。解毒薬ができるまで。

荒んだ気持ちのまま目を伏せると少ししてから布団がかけられるのを感じた。
それから頭を上げろ、という声も。その言葉に従えば枕がわたしの頭の下におかれた。
ツンデレめ。わかってるんだぞ。お前がツンデレ大会入賞者であることは。


しばらく、眠っていたらしい。
体が熱くて頭の中がどろどろに溶けているような感覚で目が覚めた。
思わず布団を退けるとひどい寒気と体中が痺れるような痛みを感じた。

「…さ」
サソリさん、という短い言葉すら紡げずに呼吸だけする。
ひゅーひゅーと空気の抜ける音だけがした。 

「さ、そり…」
喉が爛れてるようだ。
ただ呼吸をするだけでも食道がしくしくと痛む。
肺の辺りもやられてるらしい。胸が動く度に痛い。
どうしようもない苦痛になんだか、涙が出てきた。
じわじわ、じわじわと歪む視界の中で痛くて痛くて声も上げずに泣いていた。
彼は、近くにいないのだろうか。

「レナ、生きてるか」
涙が、頬を伝う。

「サソリさん…くすり…」
理不尽。
理不尽ではあるが、そばにいてくれなかったことに対してのいらだちを感じながら解毒薬を急かす。
彼は私の苛立ちに気づいてるのか気づいていないのか。
勿体ぶることもなく薬のはいった瓶を取り出した。

ほう、と安堵の息を吐くと、彼が笑った。

「(あ)」
よくない顔だ。

彼は解毒薬の入った瓶を床におくと私の上に乗っかってきた。
重みは直に苦痛となって感じられる。

「苦しいか」
頷く。

「辛いか」
頷く。

「良かったな」
ほら。
やっぱりよくない笑みだった。

彼は布団を退けると再び乗っかってきてわたしの服に手をかける。
くそが、死ね、と心の中で悪態をつくくらいしか今の私にはできない。
そして私の皮膚をするすると撫でながら顔を寄せてきた。

「興奮してる」
彼の声で鼓膜が、揺れる。

「や、だぁ」 
さらけ出された皮膚に、首や鎖骨に、舌が這う。
頭がぼんやりと、する。いたい。痛い。

「っん」
ひきつった声が出る。
背筋がぞくぞくとする。寒い、さむい。

「レナ」
寒いのに、熱い。あつくてたまらない。

彼の固い指が私の性器に、触れる。
ぱくぱくと口を動かせば彼が顔を寄せたので遠慮なく死ね、と告げた。
流石にむっとしたらしい彼は私の性器から手を離すと私の口元を覆い、再び唇を首に近づけあろう事かかみついてきた。

喉に、食道に、異物を突っ込まれてぐるぐると回されてるような気分だ。
満足に声も出さずに唸る。目の前がぐにゃぐにゃに、なる。

「い、た」
再び彼の指が私の性器に触れるがそんなことは関係なく、背中がじくじくと内側から焼かれるような痛みを感じた。
痛い、と声を上げると彼の動きは一瞬だけ止まったが自分が理由ではないとわかると動きは再開する。
普段ならもっとあんあんと声を上げているのかも知れなかったがそんなことよりも痛い。痛くてたまらない。
彼の愛撫は肉をそがれて意識が朦朧としている中でお腹に息を吹きかけられているようなものだった。
つまりはそこまで感じ取るには至らないと、そんな感じだ。

「うっ、ぅ」
別に悲しいわけでもないし彼の行動に文句を付ける気にもなれないが、泣けてきた。
苦痛に、涙が止まらない。
息を必死に吸い込んで胸を上下させる私の首に彼の冷たい手が触れる。
いつもなら大したことないが今は少しでも圧迫されると空気が届かなくなる、気がした。
可愛い、という褒め言葉はくそくらえだとおもった。

「やっ、だぁ…っ」
ずるりと私の性器の中に入ってくるものにようやく意識が下半身に向いた。
快楽とは程遠いが直接的な苦痛にも繋がらない。かといってこんな行為を望んでいるわけではないから苦痛になりえるものではあるのだが。

「抜いてっ」
「断る」
彼の体を殴りつけたところで痛むのは私の手だ。
抜けよぉ、なんて情けない声で泣きながら私の足が内側からじょりじょり削られるような感覚を味わっていた。

「いったい、ってばぁ」
「股間じゃないだろ」
「いたいって、いってるのにっ」
「泣いてろ」
ぐちゅぐちゅとひっかきまわされる股間は熱い。熱くてたまらない。
太ももの内側が自分の体液で濡れるのも、わかった。

「やっ、んっ、んん」
離れて、抜いて、止めて、という言葉を泣きながら訴えているのは私だが、離れられては困るとしがみついているのも私だ。
気持ちいいところ、なんかにあたると私の頭はますますおかしくなる。
嫌だ、という言葉は確かに本心でやめてほしいと思っているししがみついている腕への痛みが麻痺している。
いよいよ、本当に、危ないのに。

「中に出しちゃやだぁっ」
だめだめと首を横に振りながら感覚の麻痺した足は彼の固い腰を抑えるように巻きついた。
快楽に襲われて頭の中は真っ白になって飛んでいくのだけれど彼が出すもんねぇよ、と言うのに確かになぁと肯定するだけの思考は持っていた。

意識がはっきりと戻ってきたのはしばらくしてからで、その分毒は回りきっていたらしく痺れた舌は動かすこともかなわなかった。
本格的に声を出すことが出来ずに死ね、と罵ることもできないままにやけるサソリさんから解毒薬をようやく、もらえた。

「死ね」
「お前がな」