※産卵だよ!
※虫だよ!
※気持ち悪い!
※後ろの穴もだよ!

帰り道、足を止めたのは私だった。
戦闘中に傷が付いたヒルコを巻物の中にしまっている彼も動きを止めた。
不思議そうに私をみる彼に平気だと返した。

「先に、行ってて」
その言葉を最後に吐き気に従いげろげろと吐く。
でろでろとした胃液と赤いものが少し混ざっているのと、後は無数の蠢く虫だった。

「…おかしいな」
蠢く虫の姿を見ると彼はそうつぶやいた。
確かに私も変だと思っていたところだ。

戦闘中、虫を体内に送り込むという気持ち悪い術を食らった。
食らったが、虫は全て体外に出したし怪我も治した。
それなのに再び生きている虫を吐くだなんて。

不思議そうにしている彼は私に近寄ると服を脱ぐよう促してきた。
吐瀉物の近くにいるのはいい気分ではなく、場所を変えてから促されるままに服を脱いだ。

「あー」
あぁあぁ、と声を上げた。
なるほど。
私が体外に出した虫は生きてるのと、死んでるのと、それだけだ。
チャクラを感じられたのはそれだけだったからだ。
そもそも術者は死んだのになぜこうもしぶといのか。
とにかく、卵までは、感知してなかった、のだ。
羽化した虫達が出てきてるわけだ。
なるほどなるほど、と頷いてまた吐いた。

「レナ」
彼もそれを知るとしばらく考えてから私に全裸になるよう言ってきた。
彼がなにを考えてるかはわからない。こう言うときはいいことだったり悪いことだったりするから判断できないのだが。

「うっ」
うぐぅ、という声は。戦闘中にも出さないのだが。
情けないなぁという思いに駆られながら木に背を預け、声を上げる。
足を左右に開かされて彼の手が私の性器に触れる。
体温のない、固い指が無遠慮に奥へ奥へと入ってくる。
快楽を感じないわけではないが痛みの方が強い。
ぐりぐりと、固体を受け入れるようにはできてないところにまで入り込んでくる。
言いようのない苦しさが下腹部を襲ってくる。ごぼり、と嫌な音がした。

「っはぁ」
丸い玉のようなものがいくつか落ちていく。
それを彼の足がばきりと踏みつけた。
頭の中にひっかき回されるような気分なのに思考だけはひどく冷静だ。
卵が子宮口から出てきたのだから、子宮に卵があると考えて間違いないだろう。

再び彼の指が子宮口をこじ開ける。
ごぼごぼという音と一緒に卵も出てくる。
もう、いい、という言葉は枯れてた。そんなに大きな声を出してたのか。

「もう、いいです。後は、自分でやる、からっ」
ずるりと引き抜かれた指にも声を上げながら乱れる呼吸を整えようと必死に息をした。

「…そうか」
彼の落ち着いた声に安堵したのも束の間で、彼の指が私の臀部に回る。
足を開くのをそのままに私の体液で濡れた彼の指がぐにぐにと尻の穴を、肛門を、

「や、やだ…」
泣き出したい気持ちを抑えながらやんわりと拒否の言葉を口にする。
無表情、であった彼はその言葉を聞いて笑みを浮かべたようで、ああ、そうだ、彼はこういう人だった。

「…っん、ぅ」
中に入ってくる異物の感覚に息が詰まる。
尻の、穴だぞ。肛門だぞ。
排泄するところだ。中は腸だぞ。
わかってやってるのかこいつは。

「やだぁ」
意識すればするほど泣けてくるのは私だけだ。
私が泣いても彼は気にかけることもない。わかってることに余計に泣けてきた。

しばらくそうやっていじられる感覚に泣きながら声を上げていると背筋がぞわりとした。
多分、たぶん、たぶんだけど。

「やだっ、抜いて!」
急に意識がはっきりとして彼の体を引き離そうと殴りつける。
遠ざけようと押し付けながらもその感覚が大きくなる。
指が引き抜かれるのもやっぱり、遅くて、どろりとそれは出てくる。
体液で濡れたそれがいくつもごぼごぼと体内から吐き出される。

卵を出す行為、だけれど。
排泄行為に似ていて、本当に、本当に、嫌だった。

「…死ね」
「手伝ってやったんだろうが」

力が入らなくて。
彼の支えを失うとその場に座り込んだ。

「…残り、どうするんだ」
私の体液で濡れた指を口にいれる彼の素振りに吐き気を覚えながら息を整える。
言われた言葉はもっともで、疲れた体に鞭をうつ。
下腹部に爪を立てて、肉をかき分け、卵を取り出した。

「死にそう」
ずるずると血まみれの卵を取り出しながらつぶやいた。
虫の苗どころななるよりはいいじゃねぇか、と彼の言葉に何ともいえない気持ちになる。
血まみれの連なった丸い球体を地面に落して盛大な溜息をついた。

ささっと帰って、美味しいご飯を食べて、お風呂に入って、眠りにつきたかった。
暖かいお布団が私を呼んでるんだと思うとその思いは強くなった。