「う」

誰かに口を塞がれながら言われた事がある。
お前の喘ぎ方は妙だから、黙っていろ、とそんな事を。

意識して自分から出る声を認識してみれば、確かに妙な声を出していると思った。
だからそれからはその誰か達の要望通り声を潜めていた。

「うあ」
相手の背中に手を回して必死でしがみつきながら妙であると認識した声を吐き出し続けた。

行為が一段落すると布団を引っ張って眠たい旨を告げた。
彼は服くらい着ろとだけ言うとさっさと出て行ってしまう。

人の体ではない彼にそういった欲望というものはない。
けど、私がねだれば仕方ないという風ではあるが相手をしてくれる。
感情が伴っていないことは知っているけれど、彼は私の欲望を聞いてくれるから。
だから、時々、こういうことを平気で私達はするのだ。

燃えるような赤い髪を思いながら眠った。
昔の夢を見た気がしたがいい気分ではなかったのでその辺にあったお菓子を食べてもう一度眠った。

――――――――――


いつかこんな日がくるのではないかとぼんやり考えていたのだが彼は死んだ。
死んだという表現があまり似合わない人だと思う。だってその死体はあまりにも冷たいから。
想像してたより随分とあっさりしていたからかそこまで悲しくはなかった。
デイダラと死んでしまった、何が永遠の美だ、などという軽口を叩くくらいには。

そういえばトビという男がいたことを思い出し、絶壁に打ちつけられている彼の体へと近付く。
指輪のついている手を引き抜いて、ついでに首も引っこ抜いておいた。
ぬけがらになって壁に打ち付けられていた彼の体から首を引っこ抜く。
目の玉が抜けた穴は思っていたよりもシンプルで反応することもなかったが。

「なぁ、それ、持って帰ってどうすんの?飾るの?趣味悪いなぁ、お前」
「そうですよ、目もないじゃないですか。あ、黒豆いります?ちょっとその穴に対しては小さいかな?」
「おかしな気遣いありがとうトビ。大丈夫、彼の目は私がいれます。だるまのように」
「縁起かついで」
「勝利を願って」
「成功を祈りつつ」